「若い頃に料理人を辞めようと思った時、『北島亭』（東京・四谷）で食べた料理が本当においしくてフランス料理を続けようと思った」と話す「オー･コアン･ドゥ･フー」の山口 潤さん。フランスで修業し、都内のレストランやパティスリーで研鑽を重ね、５年間シェフを務めた後、レストランサービスに長く携わる沙知子夫人と独立した。
　夜は、前菜・主菜各20種弱、デザート７種の単品の他、5000円のプリフィクスなど3コースを用意。山口さんは「お客さまのことを見ているサービス人の声は重要」と言い、料理を決める際、夫人の意見を大いに取り入れる。実際沙知子さんの提案でメニューに載せた「ぶ厚く切ったサーモンの瞬間燻製 温度卵添え」（1260円）は、いちばん人気の前菜だ。この他、「牛テールの赤ワイン煮とモリーユ茸のパルマンティエ」（1980円）や「カスレ」（2100円）など、細かい仕事をしたレストランの品とシンプルなビストロ料理を並べ、どの皿も価格は抑えつつ、シェアが前提の量をつける。たとえば前菜「自家製ソーセージのソテー」（1480円）は、100ｇのソーセージ2本に砂肝のコンフィを5個添え、主菜では500ｇの魚を丸ごと調理して出すことも。「『今日はこれを食べた！』と記憶に残り、『フランス料理は当分食べなくてもいい』と思うくらい満足していただけたら」と山口さんは笑う。
　なお、他に山口さんが料理で重視するのが、〝季節感〟と〝香り〟。産地直送の魚介や野菜で四季を表現し、たとえば付合せの野菜はオーダー後の調理直前に皮をむくなど、その香りを逃さぬよう心がける。また、肉料理ではその旨みと香りを皿に盛り込むべく、肉から出たジュはソースに。ボリューム感豊かでありながら盛りつけの美しさにも気を配った山口さんの料理は、女性客にも人気だ。