「過剰な飾りを廃し、付合せも必要最低限に抑える。一見シンプルだけども味わい深い川崎シェフの料理は、私の憧れであり、目標でした」と話すのは、東京・外苑前にフランス料理店「レストラン・タニ」を開いた谷 利通さん。谷さんは、19歳の時に川崎誠也シェフの店「アラジン」（東京・広尾）に入店。以後、計4年半の渡欧時代以外の15年近くもの間、川崎氏の下で働き、最後の6年間はアラジンの2号店「メゾン カシュカシュ」（東京・四谷三丁目）のシェフを務めた。独立後の今は、川崎氏の下で学んだクラシックなフランス料理を軸に、手間をかけるべきはかけ、省くところは省いた、ゆるぎのないおいしさを持つ料理をめざしている。
　メニューは3800円〜のプリフィクスコースと、7500円〜のおまかせコースを各２本揃える。ある日の7500円のコースは「フォワグラのリゾット」、「手長エビのサラダ」、「鮑と冬瓜のスープ」、「イサキの蒸し煮 エビのソース」、「フランス産雛鳥のタマネギ、ポルチーニの詰め物」といった流れだ。
　フランス産雛鳥の詰め物は、飴色になるまで炒めたタマネギとポルチーニを腿肉に詰めてローストしたもの。その他の要素は、腿肉の下に敷くキャベツのボイル、ローストした際に出た雛鳥のジュのみという潔い仕立てが印象的だ。
「その料理が最高においしいタイミングで提供するのが私のポリシー。盛りつけや付合せに時間がかかり、結果料理が冷めてしまうのは本末転倒です」。
　また、レストランでありながら、「オニオングラタンスープ」などのビストロ料理をメニューに載せるなどして、枠に縛られない店作りにも力を注ぐ谷さん。
　今後は「タニといえば冬のジビエ料理──といったように、当店を代表する料理を生み出して行きたい」と意欲的に話す。