塩成吉思汗 千生(東京西部)
東京・八王子のJR八王子駅南口向かいのビル地下に2011年12月3日にオープンした「八王子ロマン地下」は、約180坪のフロアに23店の小規模外食店や食料品店などが密集する横丁スタイルのフードテーマパークだ。
その一角に入居するのがジンギスカン専門店の「塩成吉思汗 千生(千生)」だ。看板メニューである塩ジンギスカン(サフォーク種)800円をはじめ、原価率50%超を投じて北海道産食材の品質を武器に、5坪15席の規模で1日最大30人を集客している。
千生の看板メニューは店名に冠した塩ジンギスカン。ジンギスカンと聞くと、甘辛いタレに漬け込んだ羊肉をジンギスカン鍋で野菜と一緒に焼いた料理を思い浮かべるが、千生のジンギスカンはそれとは大きく異なる。塩味をベースに8種類のスパイスをブレンドした自家製のタレを軽く揉み込んだ羊肉を七輪で焼き、だし醤油に漬けた刻みネギをたっぷり乗せて食す独自のスタイルを提案しているのだ。
「当店で提供しているのは、豪州産サフォーク種という食用専用種のラム肉です。それも生後3ヵ月未満のミルクラムの肩ロースのみに限定しているので、肉質が柔らかく、羊独特の臭みがいっさいありません。そこでタレを使わず、肉の味だけで勝負しようと考案したのが塩ジンギスカンなのです」と店主のまさあき氏は説明する。
ジンギスカンには、マトン(成羊肉)やラム(仔羊肉)を用いることが多く、羊独特のクセや臭みが残る場合がある。これが、ジンギスカンを食べ慣れている北海道以外の地域でジンギスカンが定着しづらい要因のひとつになっていた。そこで千生は、クセのないミルクラムの肩ロースだけを用いることで、従来のイメージを払拭しようと試みたのだ。
塩ジンギスカンは1皿約130gで提供。通常はテーブルに置いた七輪でお客が自ら焼くが、「初めてのお客さまなどは、羊肉は臭いという先入観があるためか焼きすぎてしまうことがある」(まさあき氏)ため、スタッフが客席で焼いて最適な焼き加減で食べてもらうようにしている。こうした努力の結果、商品力の高さが認知されるようになり、塩ジンギスカンの注文率はほぼ100%となっている。
フード原価率は50%超
ジンギスカン以外のフードは20品前後をラインアップ。肉料理3品500〜1250円、魚の焼き物5品350〜1000円、野菜の焼き物3品200〜600円、ご飯もの4品500〜900円、おつまみ6品300〜500円という構成で、このうち焼き物メニューが10品を占めている。
中でも塩ジンギスカンに次ぐ売れ筋商品が、黄味付き和牛サガリ1250円、とろけるホルモン650円などの牛肉メニューだ。これらのメニューには北海道・十勝のボーンフリーファームで飼育された和牛のみを使用。すべてツーオーダーでカットして提供し、鮮度の維持に努めている。
また、〆物としては牛トロライス500円が売れ筋。真空冷凍したフレーク状の牛肉を凍ったままごはんに乗せて、その熱で溶けたところを食すというアイデアメニューである。
しかし、何より見逃せないのがお通し500円だ。大粒のホタテ、あるいは毛ガニ1杯など、北海道産魚介を提供する。「1人で営業しているためにどうしても料理の提供が遅くなってしまう。そこで、お客さまのストレスを少しでも軽減するため、値打ち感のあるお通しを提供しているのです」とまさあき氏は話す。
フードの原価率が優に50%を超えるのは前述の通りだが、その一方で、スタッフ1人で店を切り盛りすることで人件費を抑制。高原価、低人件費の見本ともいうべきビジネスモデルを構築している。
一方、ドリンクメニューはビール2品、日本酒3品、焼酎4品、サワー、ハイボール、ホッピー各1品、ソフトドリンク2品というラインアップ。アルコール類の価格帯は400〜650円で、売上げ比率は50%前後で推移する。
主客層は30代〜50代の男性で、1人客が半数以上を占める。客単価は3000円。今後については、「まだまだ認知度が低く、羊肉というだけで避けてしまう方も多い。いらしたお客さまに精いっぱいサービスして、塩ジンギスカンの魅力を広めていきたい」とまさあき氏は抱負を語る。
DATA
TEL.非公開
営業時間:17時~翌0時
火曜
オープン:2012年1月
店舗規模:5坪15席
客単価:3000円
月商:150万円
原価率: 50%
アルコール売上げ比率: 50%
URL: http://hacchika.jp/