ビストロ間(渋谷・恵比寿・代官山)
フードメニューは6皿4250円のシェフのおまかせコース1本のみ。この思い切った営業スタイルを打ち出し、大ヒットを飛ばしているのが、東京・恵比寿のフランス料理店「ビストロ間」だ。店の規模は13坪27席だが、2ヵ月先まで客席が常に予約で埋まる圧倒的な集客パワーを発揮。客単価7000円で、月商は550万円を叩き出している。
ビストロ間のコンセプトはオーナーの林真史氏が料理長の表成治氏に出会ったことをきっかけとして生まれたものだ。
「私は外食業とは畑違いの仕事をしていましたが、従来から食べ歩きが趣味でした。さまざまな店を巡る中で、商品のクオリティが高くても高単価な店からは客足が遠のいていることを実感していた。フレンチレストラン『シェ松尾』で研鑽を積んだ表はちょうど独立を検討している時期でしたが、その技術を生かすためには高品質を保ちながらカジュアルに食事ができる業態が必要だと考えました」(林氏)
そのための手段がコースのみという営業スタイルだったわけだが、そのうえで林氏はターゲットを20代後半~30代前半の女性に絞り込んだ業態を模索していく。ここ数年で野菜の注目度が高まっていることを加味し、新たなスタイルのフランス料理を提案することにしたのだ。
地域最安値のコースで始動
ビストロ間は2010年3月にオープンしたが、当初、コースの価格は3800円に設定していた。「やるならお値打ちをとことん突き詰めようと周辺の店のコースを確認してもっとも低い価格にした」と林氏は言う。食材価格の高騰にともない、2011年9月に現行の価格に改訂。コース内容はほとんど変更を加えていないが、現在でもフード原価率は38%におよぶことから当初の価格設定のお値打ちの高さががうかがえよう。
コース料理は季節感を反映するために1ヵ月ごとに内容を変更するが、その商品設計では「サプライズを重視している」と表氏は言う。
そのわかりやすい例がフォアグラのソフトクリームだ。この商品についてはアミューズの名物商品として定番化しているが、「フォアグラのパテをソフトクリーム仕立てにすることで、女性の方に『かわいい!!』と驚いてもらうことを意識した」(表氏)アイテムである。
また、締めの料理を好む日本人の嗜好に合わせ、「くずし」として炊き込みごはんをコースに加えているところにも個性が光る。もともとコース料理は「大食漢の女性」を基準とした分量に設計しているが、くずしを提供する前に腹具合を確認してごはんの量を調整することで、「必ず満腹になって帰っていただく」(林氏)ようにしているという。
一方、アルコールの主力はフランス産のワインだ。ボトルで赤20種、白15種、泡3種を常備し、中心価格帯は4000円台~6000円台。「料理の品質と水準を揃える必要があるので、他店では8000円前後で提供しているワインを中心に揃えています」と林氏は話す。
フード、ドリンクともに値ごろ感を追求する一方で、「お客さまには食事を満喫していただきたい」(林氏)と、コース料理は滞在時間3時間を基準にした提供ペースを設定している。テーブルは1回転+1組、客数換算で1日25人以上を集客できれば十分に利益を確保できる。そのため、回転率を求めず、満足度アップを優先する方針を採っていることも「お値打ち」に敏感な女性客の心を摑むポイントといえよう。
その勢いを駆って、2012年6月3日には同じ恵比寿エリアに2号店の「レストラン間」を出店した。レストラン間でも4250円のコース1本で勝負しているが、コース料理は1号店とは異なるスタイルを提案している。
DATA
TEL.03-5422-9685
営業時間:18時~翌0時(L.O.21時30分、金・土曜はL.O.22時)
第3月曜
オープン:2010年3月
店舗規模:13坪27席
客単価:7000円
月商:550万円
原価率: 38%
アルコール売上げ比率: 35%
URL: http://www.bistro-aida.com/