神奈川・鎌倉の「エテ」は、藤本恵史さんが開業したフランス料理店。現在、昼夜ともに約1ヵ月先まで予約で埋まる状態が続く。
　調理師学校卒業後、イタリア料理店などで働いていた藤本さんがフランス料理の世界へ飛び込んだのは、25歳の時。荻野伸也氏（現「オギノ」オーナーシェフ）と出会い、オギノのオープニングスタッフとして働くことになったのだ。「フォンやソース、加工肉などの作り方を一から教えていただきました」と藤本さん。
　オギノで3年間働き、28歳で独立する際、真っ先に固めたのが価格。夜は3800円と5000円の2本のコースとし、その中でいかに満足度を高められるかを追求する。現在の5000円コースは、アミューズ、前菜２品、フォワグラ料理か魚料理（ともに２品から選択）、肉料理（約9品から選択）、デザート、カフェという内容で、料理によるプラス料金は設けていない。「高級食材のフォワグラとマダム・ビュルゴーのシャラン鴨の2つを、5000円のコースに同時に組み込む店は少ないのでは。人件費などを抑えて材料の原価にあて、かつ付き合いのある業者さんが安定供給してくれるからこそできることです」（藤本さん）。
　コースは全体的にボリュームが多め。「生ハムとフルーツのサラダ、ライム風味」や「穴子のベニエ、梨のタルタルソース」など積極的にフルーツを取り入れ、酸味やジューシーさ、触感といったアクセントを効果的に使うことで、コースに抑揚をつける。またソース・アメリケーヌやスープ・ド・ポワソン、パイ包みなど、古典的な要素を組み込んでいるのも特徴。「長年フランス料理を作ってきた人なら創作料理もいいけれど、自分はまだまだ。しばらくは古典料理を作り続け、その魅力を伝えるとともに、腕を磨いていきたい」と藤本さんは話す。