大手低価格ラーメンチェーン店も顔負けの料理の激安価格、ボリューム、メニュー数。この3本柱を集客の吸引力とし、16坪32席で月商730万円を叩き出すのが、東京・吉祥寺の中華料理店「谷記」吉祥寺店である。
　経営母体の憲偉産業㈱は、2010年に谷記1号店を都内のＪＲ錦糸町駅近くに開業。ほどなくして月商800万円を売る大繁盛店となり、これを機に駅周辺で谷記の店数を拡大。現在は同エリアで4店を展開し、錦糸町周辺では絶大な支持を集める中華料理店に成長した。そして錦糸町圏外初出店となったのが、11年4月に開業した吉祥寺店だ。
　統括マネジャーの江氏は谷記のコンセプトを次のように語る。
「老若男女、誰でもデイリーに通える大衆中華料理店が谷記の業態づくりの理念。中国で調理経験があるコックがつくる料理を、大手チェーンにも負けない低価格帯で提供します」

日本人に馴染み深い商品は激安価格で。一方、フカヒレなどの高級料理も用意

　原価率約38％を投じるフードメニューは、アラカルト150品前後262〜4725円に加え、定食24品680円、コース料理4種1900〜4980円、食べ放題2880円をラインアップ。この利用動機を限定しない全方位的なメニューに加え、価格破壊ともいえる料理の値づけが吉祥寺店最大の集客のフックになっているのだ。
　数あるメニューの中でも餃子262円、ラーメン304円、チャーハン367円などの日本人に馴染み深い商品は軒並み破格の安値を打ち出してバリューを訴求。一方でフカヒレ4725円など高単価の商品も揃えて幅広い利用動機を喚起する。
　また、谷記全店で導入している「飲み物セット」は、採算を度外視した出血大サービスセットだ。これは対象の単品料理84品252〜924円のうち1品をドリンク（ビールまたはソフトドリンク）とセットで注文すると、どの料理をオーダーしても価格を680円とした仰天の販売スタイルだ。仮に924円の単品料理と409円の生ビールをセット注文したとすると、値引き額は653円。まさに常識破りの売り方といえるが、こうした点にも大衆価格に徹する谷記の姿勢がはっきりと表れているといえよう。
　谷記のスタッフはすべて憲偉産業㈱の中国人社員で、料理人に関しては、現地で調理経験のある人材を採用している。また女性でも来店しやすいようにクレンリネスを徹底し、店内にはひとり客に配慮してテレビを設置。この居心地のよい空間づくりもまた、吉祥寺店が支持される大きな理由のひとつだ。13年7月には東京・御徒町に6号店を開業。「将来的にはフランチャイズ化にも挑戦したいですね」と江氏は語る。

※写真手前は定食メニューの中で売れ筋ナンバーワンのレバニラ炒め定食680円。写真奥は麻婆豆腐と生ビールの飲み物セット680円。ドリンクは生ビールまたは瓶ビールの他、ソフトドリンクの中から選べる