星火(東京西部)
客単価が1万円を超す日本料理店と5000円未満の居酒屋。この中間にあるプライスゾーンを狙った和食店が、東京・自由が丘の「星火」である。2010年10月にオープンした星火のメニュー構成は5000円と6500円の2ラインで提供するコース料理と、中心価格帯を1000〜1500円に据えたアラカルト約50品。目下のところコースとアラカルトの売上げ比率は5対5で推移しており、客単価は6000円を確保している。
営業実績は21坪27席の規模で月商550万円を計上しているが、店が立地するのは東急東横線自由が丘駅から徒歩10分ほどの住宅街のど真ん中である。フリ客の吸引が望めないエリアでの営業であることを考えれば、星火が悪条件の中でいかに奮闘しているかがおわかりになるだろう。
都内のラーメン店や和食店で調理経験を積んだ店主の眞形賢吾氏は、独立前に東京・中目黒エリアで客単価3000円前後のラーメン居酒屋を開業しようと考えていた。しかし、希望の物件が思うように見つからずに出店の候補地を広げ、いまの物件に店を構えることを決めた。とはいえ、店の周囲は純然たる住宅街。そこで眞形氏は近隣に住む可処分所得の高い中高年層にターゲットを絞り、客数よりも客単価アップで売上げを確保する方針に方向転換した。
女性に支持される華やかな目玉商品を打ち出す
現状の業績を見ればその狙いはぴたりと当たったといえるが、星火が閑静な住宅街という悪立地で高い客単価を確保できた最大の要因は、親しみのある食材や料理をメニューに並べて価格を適正に抑えつつ、提供方法や器、盛りつけの工夫でハレの外食シーンを演出したことである。
その点について眞形氏は「外食をする際に店の選択権は女性が握っていることがほとんどです。そこでまず女性に支持される華やかな目玉商品を前面に打ち出すことを考えました」と語る。その考えがもっともよく現れているといえる商品が、旬の野菜を彩りよく盛りつけた季節の有機野菜わっぱ蒸し1000円(写真左)だ。
視覚的訴求力の高いわっぱで提供するこの料理はコースにも必ず組み込まれ、その注文率はコースのオーダーも含めて実に9割を超える。その一方で、メニューには匠の大山鶏の唐揚800円、揚げ出汁胡麻豆腐800円といったわかりやすい料理を並べ、日本料理の敷居を下げる効果を狙った。
また、アラカルト注文のグループ客には料理を人数ぶんの小皿に盛りつけて提供するサービスを実施。星火の来店客の男女比率は4対6、年齢層の中心は40代〜60代となっているが、こうしたカジュアルとフォーマルがバランスよく調和した営業スタイルが、女性客をはじめとした地元客の吸収につながっているのだ。
さらに眞形氏は、客席から見える板前の仕事もプレゼンテーションのいち要素と捉え、厨房の調理効率を落とさない範囲で演出効果を最大化する工夫にも取り組んでいる。「仕込みで4割、営業中の仕事は6割というのが調理のライブ感と効率を両立するちょうどいいバランス。営業中の厨房での調理が1〜2工程というのが理想ですね」(眞形氏)
星火の今後の課題は、20時以降の集客とアルコール売上げの向上だ。店で提供するほぼすべての日本酒を半合売りにするといった営業努力でアルコール売上げ比率は20%前後を確保するが、これを30%まで引き上げることがこの先の目標である。
※写真は、看板商品の「季節野菜のわっぱ蒸し」。野菜は、黒皮かぼちゃ、黄ニンジン、安納芋、モロッコインゲン、ロマネスコ、紅芯大根、ラディッシュ、芽キャベツ、ヤマブシタケの9種類を使用
DATA
TEL.03-6421-4328
営業時間:11時30分~14時、18時~翌0時(L.O.23時)
無休
オープン:2010年10月18日
店舗規模:21坪27席
客単価:6000円
月商:550万円
原価率: 30%
アルコール売上げ比率: 20%
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