和酒バールAGI(品川・五反田・目黒)
「日本酒はかつてのマイナスイメージが尾を引いて消費量の縮小傾向が続いている。ただ、その品質レベルは格段に向上しています。先入観を払拭することができれば、展開の余地が大きい市場だと考えています」
そう語るのは東京・五反田で日本酒専門店「和酒バールAGI(アギ)」を経営する平見浩志氏だ。アギのオープンは2011年4月。「当初は集客に苦戦した」(平見氏)というが、業態の磨きあげを重ねることで次第に業績が向上。13年に入ってからは対前年比20%増の売上げを維持し、目下のところ15坪24席の規模で月商は400万円に達している。
アギでは日本酒を常時40~60種揃えるが、それを小(60ml)〜特(350ml)の4つのサイズで提供している点が目を引く。アルコール原価率を40%に設定してお値打ちを追求しているが、それでも標準的な1合だと780円~という値づけになる。小260円~を用意することにより、「普段は日本酒に馴染みのないお客さまにもお試し感覚で手軽に注文できるようにした」(平見氏)のだという。
日本酒専門店として間口を広げるには、品質の追求と偏りのない品揃えが大事
また、12年1月に導入したのが飲み放題メニュー2000円。日本酒20種を揃えた飲み放題で、純米大吟醸といった高単価な銘柄も含まれるお値打ちのラインアップである。予約なしで1人でも注文できる飲み放題であり、価格を気にせず日本酒を思う存分に飲めることが好評で、注文率は60%以上にもおよんでいる。
辛口、旨口などのテーマごとに日本酒5種を揃えた飲み比べセット1000円~も3セットを用意。アギでは日本酒の品揃えを5営業日ごとにすべて入れ替えて常に新たな日本酒の味わいを提案しているが、少量提供、飲み放題、利き酒セットなど、提供スタイルに工夫を凝らすことで、「まずは1杯でも日本酒を味わってもらい、それをきっかけに日本酒に親しんでいただくことに力を注いでいる」(平見氏)のである。
一方、フードは日替りメニュー20品前後、グランドメニュー40品を揃える。「フードでは個性を打ち出すのではなく、定番のつまみを日本酒に合わせてアレンジを加えた商品を揃えるようにしている」と平見氏が説明するように、日替りは刺身、グランドは居酒屋の定番商品を中心に構成している。
ただ、現状のメニューが固まったのは13年1月。平見氏は調理経験を持たないため、フードは料理長の得意ジャンルを生かしてメニューを組み立てていた。現在の料理長は3代目。初代料理長は秋田料理、2代目は懐石料理が専門で、メニューもそれに倣った商品構成だったが、「フードで専門性を打ち出すと利用動機が絞られ、集客につながらなかった。日本酒専門店として間口を広げるには、品質を追求しながらも偏りのない品揃えをすることが大事なのだと学びました」と平見氏は語る。
開業から3年を経て業態が固まり、14年には2号店の出店を予定している。アギは従来の日本酒のイメージを払拭するために和酒バールを標榜し、客席をハイチェアとハイテーブルを中心に構成するなど、若年層が利用しやすい店舗造作を施した。狙い通りに20代~30代の支持を獲得したが、「40代以上のお客さまからは『落ち着かない』というご意見もいただく。2号店では商品構成などを引き継ぎながら、異なる店づくりの日本酒専門店にチャレンジするつもりです」と平見氏は語る。
※フードは刺身や揚げ物、酒肴など居酒屋の定番商品を中心にメニューを構成。日本酒で漬け込んだレーズン入りのバター(写真上)、里芋を用いたフライドポテトなど、日本酒向けのアレンジを加えた商品を幅広く揃える
DATA
TEL.03-6417-9180
営業時間:17時~翌2時(金は~翌5時、日は翌0時)
月曜定休
オープン:2011年4月22日
店舗規模:15坪24席
客単価:3800円
月商:400万円
原価率: 28%
アルコール売上げ比率: 50%
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