慎(新宿・代々木・大久保)
延したて、切りたて、茹でたてを徹底して追求するうどん店「慎」は、セルフサービス式のうどんチェーンとは一線を画するスタイルで、2011年4月23日に東京・新宿にオープンして以来、うどん愛好家の顧客を増やしている。
行列が続くランチタイム以外は、ツーオーダーでうどん玉を延し、カッターで切り、約15分かけて専用釜で茹であげる。天ぷらも揚げ置きはしない。提供時間は15分以上、うどんは1杯600円からとセルフ業態とは倍ほどの価格と提供時間の差があるが、早さ、安さではない価値を求めるお客に評価されている。
店舗規模はわずか10坪12席。11時~23時(金・土曜は翌0時)の通し営業で、1日で客席が着実に10回転以上しており、最多では150人が来店した日もある。
店主の楢原慎司氏は、05年から都内のうどん専門店で修業した後、住まいからほど近い現在の物件で独立開業した。修業先で学んださぬきうどんの流れを汲むが、楢原氏自身で研究を重ねた独自のうどんを提供している。また、商品をできたてで提供することを徹底する一方で、完全な手打ちではなく、延し機やカッターを利用し、効率化やスピードアップを図っている。
日本酒のバリエーションを揃え、夜はうどん居酒屋としての利用も
うどんの生地は500g~1㎏玉にし、一晩寝かせておく。オーダーが入ってから麺棒と延し機を使って延し、カッターで切る。心がけているのは、できるだけ打ち粉の量を少なくすること。慎で使用しているうどんの生地に打ち粉の片栗粉を多く使うと、味わいや食感が変わりやすいと楢原氏が感じているためだ。延す際も最小限の打ち粉の使用にとどめ、生地を折りたたまずに切れるカッターを導入し、切ったらすぐに茹でる。これによって打ち粉の使用量を極力少なくしている。
また、うどんを盛りつける際は麺をきれいに揃えて捻り、うどんの端が見えないようにしている点も特筆されよう。つやつやした麺の美しさが際立つ盛りつけで、1杯のうどんに込めた想いの強さを感じさせる。
うどんつゆは、ムロアジの他に数種の削り節、北海道・釧路産の昆布を使ってとっただしに、香川から仕入れる醤油、ミリン、酒などを加え、つけつゆとかけつゆをつくる。そば店のようにかえしを寝かせるとつゆの味が強くなり過ぎるので、うどんに合うように、豊かな風味がありながら主張し過ぎないつゆを毎日つくっている。
このうどんつゆは他のさまざまな料理に活用する。たとえば、ベースにミリンや濃口醤油、砂糖を加えて牛肉を煮たり、かけつゆとつけつゆを合わせた中にゴボウを漬け込み、ごぼう天の下味に使う。トッピングや天ぷらの味がうどんとよく馴染むようにという考えからだ。
夜は揚げたての天ぷらと日本酒を合わせ、うどん居酒屋として利用するお客も増えている。日本酒は、甘口、辛口、芳醇など、味わいのバリエーションを押さえながら、新酒、冷やおろしなど、季節限定品を随時加える。客単価は1日平均で1100円だが、夜は4000~5000円で酒をしっかり飲むお客もいる。
「まだまだ先の話になると思いますが、将来的には出身地の福岡に店を出せたらいいなと考えています」と言う楢原氏。多店化の構想を描きつつ、当面は店の磨きあげに尽力していく考えだ。
※写真は、肉釜たま850円。温かいうどんの代表的な商品で、つやつやした麺を揃えて捻る盛りつけ方も独特。肉釜たまはすき焼きのイメージで、つけつゆに濃口醤油、砂糖、ミリンを加えたつゆで煮た牛バラ肉とタマネギをトッピングする
DATA
TEL.03-6276-7816
営業時間:11時~23時(L.O.22時)、金・土11時~翌0時(L.O.23時)
無休
オープン:2011年4月23日
店舗規模:10坪12席
客単価:1100円
月商:-
原価率: -
アルコール売上げ比率: -
URL: -