桝崎（ますざき） 茂さんは、中学卒業後、郷里・福岡の鮨店に勤めた後、上京。以後、「にほんばし 亀井」など都内の日本料理店で計18年間修業を積み、2010年5月に自店を構えた。
　夜の料理は8500円、1万3800円、1万4500円のおまかせコース3本。中でも同店の柱となるのが、前菜から甘味まで12品で構成する8500円のコースだ。7月半ばのある日のメニューは、先付の「滝川豆腐」にはじまり、「平目の昆布締め」、「サトイモのから揚げ」など前菜３品が続き、「鱧のお椀」で前半の山場を迎える。その後、「お造りの盛り合わせ」、「鮎の塩焼きと鰻のけんちん」、冷やし煮物、揚げ物、強肴、お食事、甘味、といった流れだ。
　コースの中で桝崎さんが心がけるのは、日本料理の定番の料理は押さえながらも、創作性に富んだ料理を盛り込み、コースの流れにメリハリをつけること。たとえば、先の献立の前菜では、卵と赤ワイン、だしを合わせて作る「赤ワインの茶わん蒸し」を盛り込み、コースの締めとなるお食事にはトウモロコシをミキサーでかけて裏漉しし、鶏のコンソメと合わせただしで炊いた「トウモロコシの炊き込みご飯」を提供するなど、随所に「おやっ？」と思わせる料理を供して、コースにメリハリをつけて〝自分らしさ〟を表現する。また、「お酒が苦手な人でも、気兼ねなく食事を楽しんでほしい」（桝崎さん）という思いから、食中に煎茶の玉露、黒豆茶など15種類のお茶を、無料で提供している。
　なお、鮨を組み込んだ1万3800円のコースと、前述したお茶と、料理の相性を楽しむ1万4500円のコースは、ともに今年3月に新設したもの。「これからも日本料理の伝統を踏襲しながら、新しいことにもどんどん挑戦していきたい」と、桝崎さんは話す。