「手頃な価格帯でどなたでもおいしいと感じていただける料理を提供し、肩肘張らずに楽しく食事ができるお店にしたかった」と話す藤井トモヒロさんは、東京・京王線の代田橋駅から10分ほど歩いた甲州街道沿いに店を構える。藤井さんは、調理師学校卒業後、大阪のホテル内のレストランなどを経て、渡仏。ニームの「アレキサンドリア」などで2年間修業を積み、帰国後は「カーエム」（東京・恵比寿。現在は銀座に移転）、「メゾン・ド・スリジェ」（同・代官山）を経て、独立した。
　夜のメニューは、約30品を揃えるアラカルトが中心。豚の各部位（ロース、フィレ、腿、肩など）と鶏の白レバーで作る「パテ ド カンパーニュ」900円、赤ワインとバターをふんだんに使い、しっかりとした味わいに仕上げた「牛ホホの赤ワイン煮込み」2000円など、修業時代に学んだ古典の調理法を踏襲したフランス料理が揃う。その一方で、「レストランが少ない場所柄か、予想以上にフランス料理になじみのないお客さまが多かった」（藤井さん）ことから、そうしたお客を意識して随所にアレンジを加えた料理も用意。たとえば「ハンガリー鴨のコンフィ」2000円では、常連客には定石通りマスタードを添えて提供する。しかし、初めて来店したお客には、フォン・ド・ヴォーとジュ・ド・カナールを合わせ、オリーブオイルでモンテしたソースとともに提供し、コンフィの塩気とソースを融和させた食べやすい仕立てにアレンジする。
　その他、主菜とサラダ、グラスワインと前菜、といったセットメニュー（各1450円）も充実させ、幅広い客層の獲得に尽力する。「まずは手軽にフランス料理に触れられる機会を作り、古典を土台にした、フランス料理の普遍的なおいしさを伝えていきたい」と話す。