東京・六本木の喧騒から少し離れた場所にある「さ行（こう）」。「赤坂 きくみ」（東京・赤坂）などで修業を積んだ佐藤正也さんが開いた日本料理店だ。独立する際、故郷・山形の料亭に勤めていた兄・源也さんが「俺も協力するよ！」と声をかけてくれたことから、現在は兄弟で店を切り盛りする。
　佐藤さんがめざすのは、月に一度は通いたくなる〝普段使いの店〟。そこで夜の料理は、「お客さまが自身の財布から出せる価格、かつ私が納得できる食材を使って料理を提供できる金額」を想定して6800円のコースのみとした。10月のある日の献立は、タラの白子にアワビ、アン肝などを盛り込んだ先付「柚子釜」にはじまり、「イワシのつみれ椀」、「造り3種」、「牛イチボのステーキ」。その後「ゴマ豆腐の餡かけ」、「生ウニのソーメン」、「秋刀魚の炊き込みご飯」と続き、デザートで締めくくる。
　同コースの特徴の一つが、「私もそうですが、やはり日本人は牛肉好きの人が多い」という佐藤さんの考えから、必ずコースのメイン料理として供する佐賀牛や宮崎牛などを用いた牛肉料理だ。牛イチボのステーキをはじめ、「すきやき風牛鍋仕立て」や「和牛のカツレツ」など、適宜内容を変えて提供する。また、食事に続く自家製のデザートは、季節のジュースやプリン、アイスなどの５種盛りで提供するなど、全体的にボリュームが多いのも特徴。そのため、生ウニのソーメンのように箸休め的な料理を挟むことで食事にリズムを作り、かつ炊き込みご飯には消化作用のあるダイコンおろしを添えるなどして、最後まで気持ちよく食べてもらえることを心がける。
「質・量ともに価格以上の満足感を提供したい。そのためにも今後は熟成庫などを導入して、牛肉料理のバリエーションを増やしていきたい」と佐藤さんは話す。