２００９年２月にお客自らが七輪で鶏肉を焼く「七輪焼とり」の先駆けとなる「鳥番長」を出店。外食業界に鮮烈な印象を残すと、翌10年8月には山形牛を一頭買いして圧倒的なバリューを打ち出した焼肉店「日本焼肉党」が大当たり─。
　ヒットコンセプトを相次いで世に送り出す㈱バイタリティの岩田浩氏が放った第３の業態が「韓国屋台 豚大門市場」だ。11年11月、東京・馬喰町にある鳥番長のすぐそばにオープンした。
　韓国・ソウルにある四大門のひとつ「東大門」をもじった店名からもわかる通り、豚肉と韓国という国そのものが業態の２本柱である。岩田氏は「以前、外食企業に勤めていた際に韓国料理店の開発を手がけたことがあり、独立後にぜひとも出店したかったジャンルでした」と話す。
　同社のこれまでの業態を見ると、強烈なインパクトのある商品が業態の核として存在する。豚大門市場の場合、それがサムギョプサル（豚の三枚肉の焼肉）だ。近年、韓国料理居酒屋のチェーン化が進み、日本人にとって韓国料理は随分と馴染み深いものになってきた。しかしながら、専用の鉄板を用いて、専任のスタッフがサービスにあたるサムギョプサルは、韓国料理の中でも専門性の高い部類に入り、提供する店の数も限られている。
「さまざまなメニューを総花的に揃える総合韓国料理店は、うちがやることではない。あくまで、強烈なインパクトのある商品で勝負するのが私たちの方針なのです」（岩田氏）
　その豚大門市場のサムギョプサルの一番の特色が豚肉を焼成する溶岩石のプレートである。鉄板を用いる店が多い中、岩田氏自らが韓国に赴いて買いつけてきた代物だ。「溶岩石で焼くと遠赤外線効果で外はカリっと中はジューシーに仕上がります」（岩田氏）。
　また、豚の三枚肉と一緒に焼く付合せとしてプチトマトを加えるなど、独自のアレンジも加えている。さらに、サムギョプサルは１人前７８０円から注文を受け、少人数のお客に対する配慮も欠かさない。

目新しい韓国惣菜も揃えて客単価増を狙う

　また、サムギョプサルと並ぶ売りがビンデットだ。ビンデットは緑豆の粉を用いるチヂミの一種。豚大門市場では、ビンデット用の石臼を韓国から輸入し、店内で豆を挽いている。「日本で提供しているチヂミは、ほとんどが小麦粉を用いています。ましてや、緑豆を店内で挽いているのはうちの店くらいではないか」と岩田氏は胸を張る。
　ビンデットはもやし・ねぎ入り４２０円の他、青唐ニンニク４８０円、豚キムチ、ジャガ明太チーズ各５２０円など６種を用意している。
　他にはサムギョプサルに用いる溶岩石のプレートで焼くハンアリカルビ７８０円、マクチャン（ホルモン味噌炒め）５８０円やカムジャタン１９８０円〜、ブテチゲ７８０円〜といった鍋料理が売れ筋だ。つまみ類もワンチョッパル（韓国チャーシュー）１９８０円や野菜などに卵液をつけて鉄板で焼くジョン７８０円といった日本ではまだ目新しい韓国そうざいを揃えており、客単価は３５００円前後で推移する。
　パイプが張り巡らされた店内には、ハングルのメニュー表やボード、世界の国旗を飾り、韓国の屋台を思わせる独特の雰囲気を演出。「実際には韓国にこんな店はありません（笑）。日本の大衆酒場に韓国の空気感を自分なりに取り入れた結果、こうなったのです」と岩田氏は話す。
　豚大門市場は鳥番長の常連客や近隣の会社員を中心に集客。11年12月は19坪50席で月商１０００万円を超える売上げを計上した。今後はランチ帯に販売する弁当メニューを充実させて、売上げを安定させる意向だ。
　また、同社は12年１月に豚大門市場から徒歩１分の場所に４業態めとなる「揚げ三兄弟」をオープン。鳥番長も合わせた近接する３店で相互に出前を実施するなど、常連客の囲い込みにも力を入れている。