厨房を備えた１階はマルゲリータ525円を看板商品に掲げたスタンディングフロア、地下1階は落ち着いた雰囲気のレストランフロア。2010年6月に東京・神泉にオープンした「メリ プリンチペッサ」は、フロアごとに異なる空間づくりを施し、多様な利用動機を吸収することで、28坪の規模で月商800万円を叩き出す繁盛ピッツェリアだ。
　経営母体は㈱ビッグスマイル。同社代表取締役の江口慶氏はイタリア、フランス料理店などで10年以上の経験を積んだ後、06年に東京・渋谷に「渋谷道玄坂 ワイン＋キッチンＴＯＭ ＴＯＫＹＯ」を開業した。メリ プリンチペッサは同社の2号店に当たるが、「1号店は当初、欧州の各国料理をさまざまに揃えたことで売りが曖昧になり、集客に苦心しました。その時の反省から売りが明確なピッツェリアに早くから注目していました」と江口氏は語る。
　同店は個性的な外食店が密集する通りに店を構える。「立地のよさから出店を即決しましたが、2フロアまとめてでないと借りられない物件でした。神泉は周辺に住宅街が広がっている。そこでフロアごとに店づくりを変え、日常使いとハレのニーズの両方の利用動機を吸収できる店にしようと考えました」と江口氏は業態開発の経緯を説明する。

多様な利用動機を吸収できる店

　ピッツァは生地を店内で仕込んで薪釜で焼きあげており、通常メニューで13品（1050～1890円）をラインアップ。その他は南イタリア料理を中心に前菜12品714円～、パスタ・リゾット4品1050円～などを揃える。その中で１階では定番のマルゲリータとマリナーラをワンコインの価格に設定。また、ワインはボトル25種類前後3000円～を揃えているが、１階は一律1000円引きにし、値ごろ感を打ち出している。
　ワンコインピッツァを集客のフックとし、オープン直後から順調に客数を伸ばすが、一方で「フロアごとに異なる注文パターンに対応できず、ピーク時にはオペレーションが混乱してしまった」と江口氏は言う。そこでメニュー改訂を重ねながら商品数を絞り込むとともに、11年12月には日替りメニューの柱にワンコインの前菜料理６品を導入。立ち飲み客の利用を想定し、注文後の調理がシンプルな商品を揃えることで、提供スピードを向上した。
　客単価は１階2000円、地下1階4000円で推移。「もともと客単価は１階2500円、地下１階5000円を想定していました。今後はプラス１品の注文を促す商品を投入して客単価を上げ、月商1200万円突破をめざしたい」と江口氏は強気に語る。