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INTERVIEW

DATA

大阪ガス㈱ エネルギー開発部
大阪府大阪市中央区道修町3-5-11
☎06-6205-4670
創業:1897年4月
資本金:1321億6666万円
事業内容:安全で安定した都市ガスの供給を通し快適で豊かな生活と産業の発展に貢献する
http://www.osakagas.co.jp/

 近畿2府4県を地盤として都市ガスの販売量では全国4位に位置する大阪ガス㈱。同社はエンジニアリング力を武器に、調理現場の視点に立ったソリューション提案に定評がある。また料理人や食に造詣が深い人を集めた「関西食文化研究会」をサポートするなど、食文化の発展にも大きく寄与している。省エネ・省CO₂対策にも早い段階から取り組み、自家発電が可能な家庭用燃料電池「エネファーム」を発売するなど、ガスコージェネレーションシステムの開発に尽力。時代の要請に対応できる“高付加価値ビジネス”を展開している。2005年には業務用厨房システム「涼厨」を開発。調理環境の改善はもちろん、省エネ・省コストの観点からも大反響を呼んだ。現在20メーカーから319機種がラインアップ。さらにさまざまな要望に応える新たな「涼厨」機器が続々と発売される予定だ。利用者は東京・大阪をはじめ全国に広がっており、全国のガス事業体との提携を深めて「涼しい厨房」環境づくりを広めていく意向だ。

外食産業の未来を占う 産業を支えてきたビジネスサポーターたち
豊かな食文化と環境づくりに貢献してきた
涼しいガス厨房「涼厨」が省エネも実現

大阪ガス㈱

エネルギー事業部 厨房推進統括
大槻 馨

日本の食文化を豊かにするため“ガスの進化”に力を尽くし快適で機能的な厨房を提案したい
──外食の産業化が進む中、厨房設備の進化も目覚ましく変化を遂げてきました。中でも調理の手段としてのエネルギーは多様化していますが、とりわけ「ガス」は普遍的な支持を得ています。まずは、その理由を教えてください。

 火力や加熱範囲を自在に瞬時にコントロールできることが大きいと思います。また外食業では生産性の向上が要求される昨今、温度の立ち上がりが圧倒的に早く、スピーディーな調理が可能である点も評価をいただいています。

──そうした中で、厨房を涼しくする業務用厨房機器「涼厨®」を開発された経緯を教えてください。

 ガス火の唯一の弱点が2つの「あつさ」(熱さと暑さ)でした。「涼厨」は、もともと学校給食の調理場の声を反映させる形で誕生したもの。調理場の暑さや火傷の心配に加え、大量調理の現場では、衛生面や食材の鮮度管理が大きな課題となります。そこで、夏場でも室温25℃、湿度80%以下の快適かつ安全・安心な厨房環境を実現する涼厨の開発に乗り出したわけです。

──「涼厨」は“厨房イノベーション”として反響を得ています。その仕組みを教えてください。

 厨房の温度が上がる大きな原因は、機器表面の輻射熱と、調理による熱気にあります。「涼厨」は炎が見えない設計に加え、ガスの燃焼排気による上昇気流をうまく活用することで、ファンモーターを使用せずに涼しい空気を取り込み機器の表面温度を下げ、輻射熱を大きく低減できるようにしています。また従来機器よりも排気フードに近い位置で集中排気するため、燃焼排気の厨房室内への拡散を防いでいます。表面温度が下がったため機器表面に触れた程度では火傷の心配はありません。さらには、焦げ付きがないので、ガス周りの清掃時間が軽減されたとの感想も多く寄せられています。

──ガスのメリットをそのまま生かしながら、デメリットを克服したわけですね。

 ええ。中でも厨房機器が涼しくなることで、デジタル化が進んだことは大きいです。マイコンが高熱に弱かったので、従来のガス機器ではデジタル化が難しかったのです。「涼厨」には温度設定や時間設定ができる機器もラインアップしていて、温度制御や品質管理が容易になっています。パート・アルバイトの方が調理を担う場合でも、マニュアルに従って温度・時間を設定したり、あらかじめ設定したボタンを押すだけで、高いクオリティの商品をバラツキなく提供できるようになっています。

──「涼厨」で空調の負荷が軽減され、省エネやランニングコストの抑制ができる点も魅力です。

 涼厨の導入によって空調の年間の負荷が16~30%ダウンするという実験施設での比較検証による試算が日建設計さまとの協同研究で出ています。また、もともとガス厨房は製造所や発電所から需要家までのトータルエネルギー効率に優れていて、エネルギー使用量や CO₂の削減効果が電化厨房に比べて高いことも知っていただきたいところです。高効率のフライヤーなどで比較すると、ガスの場合は総合効率が80%となり、45%も効率が高くなります。

──震災以降、電気のピーク時の使用量削減がいわれています。電力使用のピークと調理や食器洗浄の時間帯は重なってきますが、厨房をあずかる現場ではどんな取組みがあるでしょうか。

 とくに電力ピーク時間帯については、すべての調理に対応できるガスコンロを、口数に余裕があればぜひ活用してみてください。また電気フライヤー(例:18ℓ=6.5 kw)や電気スチームコンベクションオーブン(例:10段=21 kw)を電気容量の大きい機種をガス式に変更することが可能であれば、大きな節電効果が期待できます。

──御社はユーザーの声を研究開発にきめ細かく反映されています。過去と現在で厨房機器・設備に求められる機能は変わりましたか。

 作業の効率化など生産性向上に対する要望は年々高まっていますね。また一方では、客単価アップや集客力強化のため、商品の付加価値をより高めたいという要望も多いです。
「涼厨」で効率化を図りながら、お客さまの前では大胆に炎を見せるといった、ガス火を使った演出をされる店舗が増えています。たとえば京都祇園にある予約がとれないことで有名な割烹料理店では、オープンキッチンの中央にガスのピザ釜を置いて、炎とご主人の調理する動きとお話しがまさに劇場のような臨場感を生み出しています。炎の持つ高揚感は人間のDNAに訴えかけ、“おいしい空間づくり”という付加価値に寄与するのだと思います。

──そうした中で「外食」は今後、どう変わっていくと思いますか。

 日本の食のレベルは年々向上していますが、それは食べ手である消費者の求める水準が格段に上がっている証しです。その背景にあるのは食の多様化です。かつて一部の人しか口にできなかった一流料理人の料理が商品化されたり、外食チェーンで提供されたりすることで、生活者により身近になっています。要は、裾野がどんどん広がることで、日本の食文化はより豊かになっていくと思います。多くの人がより健康的でおいしいものを摂取できる環境づくりのために、どんな機器や仕組みを作るべきか。われわれは「食」に携わる方の声を広く深く聞いて、ガス厨房機器・システムの開発を促進していきたいと思っています。

──エネルギーも深化していくわけですね。

 もちろんガスに限らず、多様な選択肢の中から最適と思えるエネルギーを使い分けていただくことが大前提です。だからこそ、それぞれのエネルギーの特徴をしっかり理解していただきたいのです。そのために、当社では今後もさまざまな活動を行なっていきます。
 
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