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INTERVIEW

DATA

福島工業㈱
大阪府大阪市西淀川区御幣島3-16-11
☎06-6477-2011
設立:1951年12月
資本金:27億6000万円
事業内容:業務用冷凍冷蔵庫、冷凍冷蔵ショーケース、その他冷凍機応用機器の製造、販売
http://www.fukusima.co.jp/

 1962年に業界初の業務用規格冷蔵庫「ERシリーズ」の量産をはじめて以来、冷凍冷蔵庫の分野で常に業界をリードしてきた。64年には、冷凍冷蔵機能を持つオープンショーケースの量産化もスタート。高度な温度管理技術を活用し、食を提供するシーンの拡大に貢献してきた。88年には解凍機、89年にはベーカリー機器を発売。98年には新調理システム分野に、99年にはメディカル機器を開発し理化学、医療機器分野へも進出している。
 海外事業にも積極的で、97年には香港に福島国際有限公司を設立。以来、韓国、中国(北京、上海)、シンガポール、台湾に現地法人を設けている。2009年には急速冷却・凍結機器であるトンネルフリーザーのトップシェア企業、高橋工業㈱をグループ化。温度管理技術のシナジー効果で、業界への提案力をさらに高めた。創業60周年の今年は企業の「記念ロゴ」を制定、100周年に向け新たなスタートを切る。

外食産業の未来を占う 産業を支えてきたビジネスサポーターたち
「温度コントロール技術」を中核に
外食にソリューションを提供し続ける

福島工業㈱

代表取締役社長
福島 裕

店トータルでのクオリティアップに、われわれの技術を活用していただきたい
──御社が業界初の業務用規格冷蔵庫「ERシリーズ」の量産を開始したのが1962年。『月刊食堂』創刊の翌年であり、まさに外食が産業化に向けて走りはじめたタイミングでした。温度管理、鮮度管理という部分で業界に貢献してきた御社の歩みは、そのまま外食産業化の歴史と重なると思います。

 われわれは「温度コントロール技術」をベースに食産業の発展に貢献する、というコア・コンピタンスを掲げて、さまざまな製品を開発してきました。温度管理と一言でいっても、冷蔵、冷凍からはじまって氷温、高湿度氷温、冷蔵・冷凍・氷温を組み合わせた3温度帯管理というように、素材や目的に合わせて多彩な技術があります。その技術を活用することで、高品質な食を提供できる場が増えたことは確かだし、当社はそれを裏方から支えてきました。
 しかし近年、外食業の社会的な位置付けが変わる中で、われわれも裏方に徹しているだけでいいのか、と考えるようになってきました。

──社会的な位置付けの変化とは、具体的にはどういうことですか。

 外食の現場で安全・安心ニーズが拡大していることに顕著なように、社会全体に対する責任が増してきていると思うんですね。消費者が外食に求めるニーズが高度化している。それは外食が産業化した結果でもあるわけですが、そういう状況を踏まえてわれわれも、もっと提案型になる必要があります。あるいは外食産業の方々と一緒に、国民の食生活向上に貢献しなければなりません。
 われわれは業界に向けてソリューション(解決策)を提供するのが使命であり、その中核に温度管理を位置付けてきたわけですが、そのソリューションをより、外食の経営サイドに近づいた形で再定義したい、と考えているのです。

──安全・安心の実現に向けて、さらに踏み込んだ提案をしていくと。

 その通りです。温度コントロール技術を超えて「食の安心技術」を高める。それによって問題解決能力を高めていくということです。
 その一環として開発したのが「FEクリーン水生成装置」です。これは生鮮食品の殺菌・洗浄用の電解水を生成するもので、食中毒の主たる原因菌であるノロウィルス、さらには最近話題になった腸管出血性大腸菌O111も不活性化できることが、データで実証されています。他に、逆浸透膜を使って不純物を除去し純水をつくりだす「RO水生成装置」も開発しています。
 水は、言ってみれば料理のベースとなるものです。消費者の安全・安心ニーズに対応するとともに、こうした装置の導入が、店で働く人々の衛生意識の向上にもつながる。店トータルでのクオリティアップを図るために、われわれの技術を活用していただきたいと考えているのです。

──考えてみれば、御社が業務用冷蔵庫の開発・量産を通じて提供した温度管理と鮮度管理は、外食にとって最大のソリューションでした。

 当社のERシリーズは、それまで注文に応じて製作するオーダー製品であった冷蔵庫を規格化・大量生産化した先駆けでした。同時に、冷却方法についても食品の乾燥を防ぐ自然対流式を採用していた。このことは確かに、当時の外食の産業化に大きく貢献したと自負しています。
 その後も、温度管理は常にわれわれの技術の中核であり続けています。89年に発売したドゥコンディショナーなど製パン業界向け機器も、冷蔵庫で長年培ってきた温度管理技術に解凍や発酵技術を加えたもの。98年発売の新調理システム機器「ブラストチラー/ショックフリーザー」は、加熱した食品をマイナス40℃の冷気で一気に冷却することが技術上の鍵で、そのためプロの料理人の協力も仰ぎ、全社を挙げて開発しました。

──新調理システムは、調理の概念を変えるところまで踏み込んだ、画期的な提案でした。この機器を開発した頃から、御社のソリューションの幅は広がってきたわけですね。

 そうですね。それは、外食の現場のニーズに対応した結果でもあります。そして近年、そのニーズはさらに高度になってきています。
 たとえば昨年、業務用低温スチーマーを発売しました。これは40~95℃のスチーム空間の中で穏やかに蒸すことにより、素材の酸化を抑制し保湿性を高めます。すなわち、素材のよさを引き立てる調理法。素材本来の味を生かすことも、外食の現場では大きなテーマであり、それに対応したのがこの機器なのです。

──省エネルギー、エコロジーへの対応と、外食の現場のニーズはさらに多様化しています。

 省エネについていえば、主力の冷凍冷蔵庫、ショーケースなどで従来機種比較で最大40~65%の消費電力ダウンを実現しています。この5月発売のヨコ型冷凍冷蔵庫では、省エネ性に加えてメンテナンス性、使い勝手などさまざまな点で改良を加えました。そういう部分で、現場のニーズに応えるのも重要なことです。今年7月には、もうひとつの主力商品である縦型冷蔵庫のモデルチェンジも予定しています。
 当社は今年、設立60年を迎えます。この節目の年に、最も伝統ある製品である2つの冷蔵庫がモデルチェンジされるわけですが、これを機に会社として、業界への提案力をさらに高めていきたいと考えています。その核が、食の安心技術なのです。
 また、日本の外食業が新市場としてアジアに目を向ける中で、われわれもそれをサポートしていきたい。中国、韓国、シンガポール、香港、台湾などに現地法人を持ち、すでに30年前から事業展開していますから、活用していただけるネットワークもあります。
 日本のトータルな食文化を紹介していくという、本当の意味での外食の海外進出に、われわれの立場で貢献していきたいと思います。
 
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