日本の伝統食品
落花生
(千葉県・八街)
地中で熟す風変わりな実を、筑波おろしのからっ風で干し上げる
落花生には、つい食い意地のブレーキが甘くなる。
とくに新豆は、まずい。「ぱりん」と殻を割る小気味よさ、初々しい味が、あとを引いてやめられない。
落花生屋さんによると、手間なしのサヤなしピーナッツを抑えて、サヤ付きの人気は不動だそうだ。
16世紀にコロンブスが新大陸から持ち帰るまで、落花生は世界でも無名の存在だった。しかし、日照りや乾燥に強く、栄養価も高いことから、すみやかに世界中に広がり、その約100年後には江戸初期の長崎に伝わった。
舶来の豆はとても風変わり。地上で可憐な花を咲かせ、地中で実を結ぶ。当時は、実物にはめったにお目にかかれないめずらしい作物だったのだろう。「花が地に落ちて、実になる不思議な豆である」とか「花の露が落ちたところに実ができるのだ」とかいわれていたらしい。それが落花生という風流な名の由来である。
◎お問い合わせ:荒木農園
◎住所:千葉県八街市八街口22-31
◎TEL:043-444-3288
Text:Yukie Mutsuda Photo:Hiroshi Ohashi
9月中旬に収穫した落花生を野良に積み上げて、2ヵ月間ほどからっ風にさらして自然乾燥。11月中旬頃に脱粒機で粒をはずしてサヤ付き落花生にする。
江戸時代まで軍用馬の牧場だったという、広々とした千葉県八街の落花生畑。落花生を積み上げた「ぼっち」が点々と見える。