日本の伝統食品
半田そうめん
(徳島県・半田)
小麦粉の大団子を太さ1㎜の糸にして、冬の陽光と北風で仕上げる寒作り
庭先に並んだまぶしい素麺すだれを揺らして、冷たい空っ風が吹き抜ける。そんな日は、絶好の素麺日和。
「寒の水で作って寒風に干したら、無理せんでも、ええ素麺になります。冬のやさしいお日さんにあたると、ええ匂いがして、色も白うなるんですわ」
徳島、半田素麺製造家の杉本文太郎さんが素麺を作るのは、冬の晴れた日だけ。通年生産が主流になった今も、昔どおりの寒作り、庭干しを守る。
半田素麺はちょっと太め。ゆでるのにうどんなみの時間がかかるが、少々のゆで過ぎはへっちゃら。煮ても炒めてもべたつかず、へたばらない。
このコシの強さを生み出すのは、寝かせと引っ張り。
小麦粉をこねて寝かせ、蚊取り線香のように切り回し、縒りをかけながら徐々にのばして、ついには大きな団子を径1㎜の糸にしてしまう。
弾力に富んだ、すべすべの触感が、昔気質の素麺の身上である。
◎お問い合わせ:杉本手延製麺
◎住所:徳島県美馬郡つるぎ町半田字小野182
◎TEL:0883-64-2154
Text:Yukie Mutsuda Photo:Hiroshi Ohashi
冬の晴天を選んで行なう「庭干し」は、天保年間以来の伝統。冷たい剣山おろしと柔らかな冬の陽光でじわじわ乾かすと、すべすべの白肌素麺に仕上がる。
いっぺんに引っ張ると生地が傷んでしまう。国産の圧搾ナタネ油を塗りながら、十数回に分けて、旧式延ばし機にかけて徐々にのばしていく。