日本の伝統食品
特長ヒジキ
(長崎県・対馬)
漁は年に一日。
春の大潮の日に刈り取ってこしらえる海からの贈りもの
4月の大潮の日の朝、長崎・対馬鰐浦(わにうら)の港からいっせいに磯舟が出る。
漁は年に一日だけ。めざすは背丈ほどもある「特長(とくなが)ヒジキ」だ。
長ヒジキの枝葉を落とし、茎だけを煮て70~80 cmもある特長の干しヒジキに仕上げる。ばりばりに乾いて、みるからに堅そうだけれど。
「やわらこうて、話にならんほど旨か」
上対馬町鰐浦の漁師は胸を張る。
長ヒジキは、古くから冠婚葬祭の進物や、贈答用に作られてきた鰐浦の伝統食。行事の人寄せのまかない料理には、今も長ヒジキの煮ものがつきものだという。
荒磯に育つ上質なワカメなど海藻類は豊富なのに、なぜかヒジキなのだ。 長めに切って油で炒め、油揚げやシイタケなどを入れて、水を加えず甘辛く煮ていただく。
ぷるんと中身が詰まっていて、ゼンマイにも似た歯応え。なるほど、葉っぱばかりのものとは比べようもない。
◎お問い合わせ:鰐浦区購買部
◎住所:長崎県対馬市上対馬町鰐浦
◎TEL:0920-86-2723
Text:Yukie Mutsuda Photo:Hiroshi Ohashi
採りたてヒジキをぐらぐらの湯に入れると、ぱあっと鮮やかな緑色に変わる。束ねる紐は、丈夫ですべらないシュロの葉。昔ながらの知恵だ。
春先の干潮を待って鎌でヒジキを刈り取る。長いものは2mにもなるという。夏には枯れてしまう