日本の伝統食品
浜名納豆
(静岡県・浜松)
自然の麹菌を呼び寄せて醸す、中世から生き続ける古刹の滋味
納豆といってもねばねばしないし、糸も引かない。さらっと乾いた黒っぽい豆粒を噛みつぶすと、じっくり醸された旨みが、口いっぱいに広がる。
はじめて食べたのに、なにやらなつかしい。豆味噌に似た味わいで、ご飯や粥とも相性がいい。
ときおり噛みあてる涼しげなヒリヒリは、辛皮(からかわ)。100年前に絶滅したといわれる、幻の香辛料だ。
浜名納豆は、徳川家康の時代から、浜名湖に近い浜松市三ヶ日町の古刹、大福寺で造られている寺納豆である。
留学僧が古代中国から製法を持ち帰ったといわれる寺納豆は、肉食を禁じた仏門の僧侶たちの滋養食。千利休以来多くの茶人にも好まれ、数多くの茶会の茶菓子として珍重されてきた。
中でも、食にうるさい家康のお気に入りだったのが、この浜名納豆。
暑い盛りに仕込んで、2ヵ月半ねかせ、秋の日ざしで干し上げる。今も住職の手で、昔さながらに造られている。
◎お問い合わせ:大福寺
◎住所:静岡県浜松市北区三ケ日町福永220-3
◎TEL:053-525-0278
Text:Yukie Mutsuda Photo:Hiroshi Ohashi
浜名納豆の仕込みは7月。夏の暑さを経て発酵熟成して芳香を醸す。秋口に桶あけし、さらっと干し上げる。滋養豊かなご飯のとも。
山椒の木の皮。山椒の木を伐り、トゲ、葉と実を落とし、ゆでると、皮がするりと取れる。表皮を削り落として塩漬けする。仕込む前にせん切りにし、再度ゆでて塩抜きして使う。