日本の伝統食品
釣りたらこ
(北海道・古平)
厳冬の海で釣るタラの真子は、鮮度と塩でこよなき逸品となる
ごく細かな粒がとろけて、口中に冬の海が広がる。
北の海から届いた初物を肴に、まずは一杯。酒飲みの幸せをかみしめる。
次に少しあぶって、ぷりんとふくらんだところを茶漬けでいただく。
この季節心待ちにするのは、どこにでもあるけれど、めったにないもの。塩しただけの、昔作りのたらこだ。
たらこに昔風も今様もあるものか、とお思いだろうか。
よく見かける赤い制服を着せたようなたらこは、今様の着色たらこ。色を混ぜたり色抜きしたり、自然らしく装う技も進化しているそうでややこしい。
本来はタラの真子(まこ)(卵巣)に、塩しただけのシンプルなもの。それだけに原料の吟味が勝負どころ。近海で釣りあげるスケトウダラの、ちょうど頃合いに熟した真子。それもとびきり新鮮でなければならない。
塩だけで、うならせる逸品に仕立てるのは、至難の業なのである。
◎お問い合わせ:ヤマダイ藤田水産
◎住所:北海道古平郡古平町本町40
◎TEL:0135-42-2174
Text:Yukie Mutsuda Photo:Hiroshi Ohashi
透けるような色はそれぞれ微妙に違う。この色つやが釣りたらこの身上。真子はそれぞれ微妙に色が違うが、塩が熟れると少し赤みが増す。
北海道・積丹半島の付け根にある漁師町、古平(ふるびら)。昭和後期までスケトウダラの大漁が続き、延縄漁が盛んだった。今は車で2時間ほどの乙部町の港から真子を運び、たらこに加工している