日本の伝統食品
五島するめ
(長崎県・福江)
手に吸いつく吸盤をはがしながら作る、由緒正しきアオリイカの干物
世の中が気ぜわしなくなったせいか、近頃は酒場でも、噛めば噛むほど味が出るシブイやつに、あまりお目にかからなくなった。
酒のとも、するめの話である。
古いなじみの来歴をひも解いてみると、するめは日本人にとって、ただの干したイカ以上の存在だったことがわかる。
平安時代に編まれた『延喜式』(927年)によれば、朝廷への献上物目録に名を列ねる由緒正しき食べもの。
寿留女(するめめ)の字をあてて、婚礼などの祝い事にはなくてならない縁起物。大祭儀式の神饌。鎮守の杜の祭りのお供え、正月のお飾りといった身近な祝い事にも登場する。
海の幸山の幸とお神酒を取り揃えて、神々のご機嫌をうかがう大役を、昆布とともに果たしてきたのである。
江戸の昔から、名品とその名を知られていたのが「五島するめ」。色白で見目麗しいアオリイカの寿留女である。
◎お問い合わせ:山戸海産
◎住所:長崎県五島市富江町富江195-10
◎TEL:0959-86-0104
Text:Yukie Mutsuda Photo:Hiroshi Ohashi
長崎港から約90㎞、長崎・五島列島の福江島で、秋から冬にかけて獲れるアオリイカで作る五島するめ。
透けるような白肌。手のひら大約100gで中サイズ。特大サイズはその3倍ほどになる。