日本の伝統食品
干し蕨
(山形県・小国町)
雪国では春草のおい茂る山野を焼き、萌え出る早蕨を朝露の野に摘む
雪国の春は、じれったいほどゆっくりやってくる。そのかわり、雪が融けると一気に春爛漫。早足で初夏へと移っていく。
飯豊(いいで)連峰の山ふところ、山形県西置賜郡小国町の集落は、5月に山菜王国となり、6月もまだまだ続く。
ワラビ、山ウド、シドケ、ウルイ、コゴミ、コシアブラ、タラノメ、シオデ、ミズナ、アズキナ、ゴボウアザミ、行者ニンニク、ゼンマイなど、採取する山菜は20種ではきかない。
数多ある山菜のなかでも、ワラビは小国自慢の看板娘。山野を焼き払ったあと、焼土を突き破って萌える早蕨(さわらび)の太く柔らかい一本一本に、春の活力がむっちり詰まっている。山野に自生するものは、アクが強く、やすやすとは食べられない。
採る時期、場所、アクの抜き方、その保存法など。一筋縄ではいかない山菜をものする技と知恵は、代々ばあちゃん直伝。山菜王国の底力である。
◎お問い合わせ:小国町森林組合
◎住所:山形県西置賜郡小国町大字小国小坂町2-57
◎TEL:0238-62-2229
Text:Yukie Mutsuda Photo:Hiroshi Ohashi
飯豊連峰の麓に広がる蕨野。ワラビ摘みは早朝4時半~朝7時頃まで。朝飯前にすませてしまう。朝もやが晴れ、雪渓の残る地神山が姿を現した。
早朝の蕨野で、芽の閉じたものだけ、上から20㎝ほどを摘む。雪の下で蓄えた活力が詰まった小国のワラビは、太くぬめりがあって柔らかい。