日本の伝統食品
利尻昆布
(北海道・利尻島)
最北の短い夏の太陽が、最短1日で干し上げる千年来の旨みの宝庫
堅いカドをだましだましふやかすと、口の中にじんわり海が広がる。よい昆布は、そのまま食べてもおいしい。
古くは〝ヒロメ〟、〝エビスメ〟と呼ばれ、千年の時を越えて日本人に愛されてきた旨みの宝庫。
和の料理の粋であるばかりか、「よろこんぶ」といわれて、祝儀や行事になくてはならない縁起物、供え物としても珍重されてきた。
だし昆布の一級品と誉れ高い利尻昆布は、細身だが肉厚で重く、つややかな漆黒。そのコクのある旨みと、濁りのない清澄なだしは、とくに昆布にうるさい京都で喜ばれるという。
タイやヒラメなど白身魚のおすまし、白肌の冴える千枚漬けにも利尻昆布がその真価を発揮する。
リシリコンブというのはれっきとした学名。北海道・留萌や知床半島西岸の冷たい海で採れる。なかでも寒流と暖流がぶつかる利尻、礼文島周辺の天 然物には、最上の折り紙がつく。
◎お問い合わせ:利尻漁業協同組合
◎住所:北海道利尻郡利尻富士町鴛泊
◎TEL:0163-82-1105
Text:Yukie Mutsuda Photo:Hiroshi Ohashi
採ってその日のうちに太陽光で乾かしたものが最上。光沢のある漆黒の昆布に仕上がる。縁のミミを切り落とし、重さ、長さ、色つやを見て等級ごとに選別する。
稚内から65㎞、最北の洋上に浮かぶ標高1721mの利尻富士。利尻島の漁師たちは、漁期になると、お山を仰いで移り気な風や天気を読む。