日本の伝統食品
サフラン
(大分県・竹田)
紀元前から栽培され、貴金属のように珍重された深紅の香辛料
ぱらっと鍋に散らせば、魚介のスープもごはんも、たちどころに色美しい南欧風になる。
なにかと重宝するこの香辛料は、地中海沿岸原産のサフラン。秋咲きの花の雌しべである。
晩秋に花を摘み、ひと花ひと花手に取って雌しべを抜き、練炭で色つやよく乾かす。花100個余から、たった1gしか作れない稀少品だ。
1本わずか0.003gほど。鼻息でも吹っ飛びそうな花蕊(かじん)は、独特の香りと、その一万倍の重さの湯を鮮やかな黄色に染めるパワーを秘めている。
太陽の色、黄金の色に通じるからだろう、紀元前から栽培され、古来もっとも高価な香辛料の一つとして珍重されてきた。中世ヨーロッパでは歓喜の薬ともいわれ、同じ重さの金と交換されていたという。
そのサフランが100年以上も前から九州の小さな集落で作られ、独特の手法でひっそりと今に続いている。
◎お問い合わせ:大分みどり農業協同組合 特産課
◎住所:大分県竹田市大字飛田川2095-1
◎TEL:0974-63-1011
Text:Yukie Mutsuda Photo:Hiroshi Ohashi
「絹のようにつややかに、針のように真っ直ぐ、紅色鮮やかに」乾かすのが伝統の技。練炭の火で干し上げた秋咲きサフランの花の雌しべ。
地中海沿岸原産、アヤメ科の花、サフラン。江戸時代も終わりに近い文久末年(1863年)に渡来したとされ、以来漢方薬として珍重されてきた。