日本の伝統食品
鮭の燻製
(北海道・余市)
白樺と樫のチップでじっくり燻され、醸し出される銀毛鮭の醍醐味
毎年、歳の暮れに北海道余市から、サケ一本丸ごとの豪気な燻製が届く。
しみ込んだ白樺の煙の匂いをかぎ、黄金色の姿に見惚れて、まずバーボンをロックで一杯。それからおもむろに頭を落とし、削ぎ切りにする。
出刃包丁が脂でぎらつく。
表面は鎧を纏(まと)ったようにかっちり。やわな包丁では歯が立たないが、中身は柔らかいソフトスモーク。2ヵ月半かかって、じわじわ醸(かも)された濃厚な味わいが舌にとろける。
さらにひと月半、低温の煙でじっくりと、芯まで乾かしたハードスモークも捨て難い。香ばしく、噛みしめるほどに旨みがにじむ。
ソフトはそのまま賞味した後も、マリネやパスタのクリームソースなどに応用がきく。皮はさっと揚げて、佳きつまみになる。
故郷の浜に戻ってくる銀毛鮭が、伝統的燻乾手法で、見事としかいいようのない作品になる。
◎お問い合わせ:南保留太郎商店
◎住所:北海道余市郡余市町港町88
◎TEL:0135-22-2744
Text:Yukie Mutsuda Photo:Hiroshi Ohashi
9月のオホーツク海で獲れる銀色のサケだけが、冬の余市の寒風吹き込む燻煙室で、じっくり燻製にされる。
余市の沖合にしかけた定置網に、ひと網数千尾ものサケが入る。婚姻色の出ていないものは「銀毛」、婚姻色のまだら模様のものは「ブナ」と呼ばれる。