日本の伝統食品
黒糖
(徳島県・奄美)
幻のサトウキビと古来の製法が生む、ミネラル分たっぷりの甘み
甘いものには気分をほぐす作用があるんだろうか。ごつごつした黒糖をひとかけら口に含むと、心がまあるくなる気がする。穏やかな甘みがゆっくりとろけて、不思議に元気が出る。
奄美大島では、古くから「さたっくぁやくすり(黒糖はくすり)」、というそうだ。あの黒さに、秘めたる底力があるのかもしれない。
江戸時代初期、日本で初めて砂糖が作られたのは、ここ奄美大島。奄美では、黒糖は単に調味料ではなく、お茶うけになくてはならないおやつでもある。サトウキビの搾り汁を、ていねいにアクを取りながら大釜で煮詰め、よくかき混ぜて冷ますと黒糖ができる。
南の強い太陽光を浴びて、全長3mにも育つサトウキビの搾りたてジュースを、そのまま煮詰めて作る天然果汁の濃縮版。
独特の風味と複雑な甘みには、大地の養分がたっぷり溶け込んでいる。長寿の島の元気ぐすり、おひとついかが。
◎お問い合わせ:やどりの里
◎住所:鹿児島県奄美市龍郷町秋名1319-2
◎TEL:0997-62-4348
Text:Yukie Mutsuda Photo:Hiroshi Ohashi
薪とサトウキビの搾りガラで炊いて、アクを取りながら2時間半。搾り汁が1/10量になるまで煮詰める。
大正時代から昭和初期まで栽培されていた大茎種のサトウキビ。皮が柔らかく、甘みも水分も多い。今ではほぼすべて栽培効率のいい種に変わったが、大茎種(たいけいしゅ)の味のよさは地元の語りぐさ。