日本の伝統食品
すくがらす
(沖縄県・津堅島)
年に数日、珊瑚礁の浅瀬にやってくる稚魚でこしらえる、長寿の島の元気食
那覇の公設市場は、私の大好きな場所である。豚の頭が店先にどかんと鎮座していたり、ウミヘビの真っ黒な燻製がぶら下がっていたりしてぎょっとする。薬草やさまざまな乾物など、わけわからないものがあってわくわくする。
すくがらすもそのひとつ。ガラス瓶の中に、小魚が一方を向いて一糸乱れずびっしり詰まっている。聞けばアイゴの稚魚、スクの塩辛だという。
食堂ですくがらすを注文すると、おもしろいことに、豆腐の上にのってくる。これがいやでも酒を呼ぶ。
半端じゃない塩辛さが豆腐の味を引き立て、豆腐が塩気を包んでほどよく和らげてくれる。小魚を噛み砕く野趣豊かな歯ごたえと豆腐の柔らかさ。硬軟混ざり合えば、味の妙ばかりか、タンパク質とカルシウム一挙両得。元気の出る取合せだ。
そのうえ漬け汁は、煮ものや炒めものになくてはならない魚醤として重宝に使われる。
長寿の島の優れものである。
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Text:Yukie Mutsuda Photo:Hiroshi Ohashi
スクに塩をしてしばらくすると水が上がり、発酵がはじまる。最初は塩辛いばかりで旨みがない。3ヵ月以上熟成を待つと、まろやかな味わいに。
走る船上から海面を見つめ、沖合から赤いボール状に渦を巻きながら寄ってくるスクの大群を探す。干潮時の珊瑚礁の内側は、立って歩けるほど浅い。