日本の伝統食品
鰹節
(鹿児島県・枕崎)
青魚の旨みをカビで閉じ込め、和の味になくてはならないだし汁に
カツオだしの旨みは、古来、日本人に愛されて、今に生きのびてきた。
それだけを食べても、そうおいしいわけでもないけれど、これなしに日本の食はありえない。
古くは、背の青い流線型の魚、カツオに、堅魚の漢字をあてている。
どちらかといえば身の柔らかい魚が、なぜ堅い魚なのか。
奈良・平安の時代にはカツオを生食せず、その煎じ汁「いろり」が、貴族たちのうま味調味料として使われていた。古代人は当初から堅魚の旨みに注目し、だし用に加工していたのだろう。
今のような燻乾の鰹節が登場するのは、室町時代の末期のこと。
カツオを切ってゆで、堅木の薪で燻して20日間。炭のようになるまで燻煙乾燥する。さらにカビと天日でじわじわ乾かすと、本枯れ節のあの芳香が醸される。「生きグサレ」と言われるほど足の早いカツオが、ほぼ半年かかって、和の味の源になる。
◎お問い合わせ:丸久鰹節店
◎住所:鹿児島県枕崎市桜木町120
◎TEL:0993-72-2654
Text:Yukie Mutsuda Photo:Hiroshi Ohashi
乾燥の最終仕上げをするのはカビ。堅木の煙で燻して乾燥した後、カビつけと天日干しをくり返し、水分を抜いて本枯れ節にする。
鰹節作りはまず生切りから。2㎏もあるカツオを、あっという間に三枚におろす熟練の腕前。男の人は片手で尻尾をつかんでつるして「宙切り」する。