日本の伝統食品
凝煎飴
(香川県・三木町)
寒に芽を出した讃岐の麦芽が、白米をとろりと甘い黄金色の飴に変える
丈夫が取り柄の子どもだった頃、風邪を引くのが楽しみだった。お目あては、バナナととろりと甘い水飴と、いつになくやさしいお母さん。戦後の甘いものの少ない時代、水飴は子どもらのささやかなオアシスだった。
米と麦芽で作る麦芽水飴とのつき合いは古く、平安時代に編纂された『延喜式』にも出てくる。当時、まだ砂糖はないに等しく、日本人がその甘みを知る以前から、甘党を喜ばせてきた。
讃岐の麦芽水飴、凝煎飴は、かつてはお母さんが手作りするおやつだったという。消化がよく、のどの痛みや咳を和らげてくれる家庭薬でもあった。
寒の水に浸して、ぷっくりふくらんだ小麦の種籾を、藁筵に包んで発芽させ、天日でからからに干すと麦のモヤシになる。これが麦芽である。
これを米のお粥に混ぜ込みながら、半日とろとろ煮詰めると、ちっとも甘くない米と麦から、なつかしい、甘くとろける千年来の甘党の友が生まれる。
◎お問い合わせ:三原飴店
◎住所:香川県木田郡三木町大字池戸3746-2
◎TEL:087-898-1377
Text:Yukie Mutsuda Photo:Hiroshi Ohashi
江戸享保年間から、代々女たちの手で守られてきた讃岐の凝煎飴。「病気すると、親がなめさせてくれた」薬代わりでもあった。
寒中に小麦の種籾を発芽させ、乾燥させた麦のモヤシ、麦芽。種籾から白い根と芽が出たら、のびないうちに半月ほど天日干しする。