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月刊食堂60周年特別企画 外食支援企業13社が語る 業界へのメッセージ、これからの貢献

アサヒビール株式会社

東京都墨田区吾妻橋1-23-1
お客様相談室 ☎0120-011-121
https://www.asahibeer.co.jp
[設立]1949年9月
[資本金]200億円

アサヒビール株式会社
代表取締役社長
塩澤賢一

量から質へのニーズ転換を踏まえ
外食ならではの酒の価値を追求

「月刊食堂」の創刊60周年、誠におめでとうございます。この長きにわたって日本の外食産業の発展に貢献されてきたことに心から敬意を表します。
 私どもビール業界にとって業務用市場はお客さまとの重要なタッチポイントであり、とりわけ外食の本格的な産業化がはじまった昭和40年代以降、外食業界と緊密なパートナーシップを築いてきました。酒を扱う新しい業態が次々に登場し業態の細分化も進むなか、「酒を飲むシーン」の拡大を外食業界と二人三脚で実現してきたと自負しています。
 一方でこの間、外食マーケットの競争は激化の一途を辿りました。外食は参入障壁の低い産業であり、それが業界の活性化につながりましたが、競争が行き過ぎた低価格化を招いたことも確かです。結果として薄利多売の傾向に拍車がかかり、外食の経営環境はさらに厳しいものになっていきました。
 いままた新型コロナウイルス感染拡大という新たな脅威が外食業界を襲い、居酒屋など酒を主力商材とする業態は先の見えない苦境に置かれています。しかし「明けない夜はない」というように物事にはゴールがあり、お客さまは必ず戻ってきます。その時に自信をもってお客さまをお迎えできる体制をつくっておくことが大事。そして私どもは、その体制づくりを全力でサポートしていきたいと考えています。
 何よりも大切なのは外食ならではの価値を実現すること。その柱は「本当においしい生ビール」の提供です。私どもは飲食店の生ビールの品質を認定する独自の制度を設けており、「うまい!樽生」認定店が8月現在で約850店となっています。ビールの保管や注ぎ方などのノウハウを学んでいただくとともに、営業担当者が常にお店に寄り添い、機器のメンテナンスにも機動的に対応する。これによって「うまい!樽生」認定店を着実に増やしていきたいと考えています。
 そしてもうひとつの柱が「プレミアム感」の実現です。日本だけでなく世界的に見ても飲酒人口が減っていくなかで、量を追求するマーケティングは通用しません。大事なのは質であり、価格が高くても積極的に選んでいただけるプレミアム感が不可欠です。それには商品自体の高品質化や高付加価値化に加えて提供法も大事。当社には氷点下の“スーパードライ”「エクストラコールド」があり、通常の生ビールより高価格で提供するお店が多いですが、大変ご好評をいただいています。こうした形での価値向上にも、コロナ後を見据えて取り組んでいきます。

お酒の飲み方に多様性を

 外食ならではの酒の価値を追求するとともに、当社は「責任ある飲酒」を推進し、飲む人も飲まない人もお互いが尊重し合える社会の実現をめざすため「スマートドリンキング」を提唱しています。この「スマートドリンキング」を具現化する商品の第1弾として、アルコール度数0.5%の“微アルコール”ビールテイスト飲料「アサヒビアリー」を3月発売しました。仕込工程で香り豊かでコク深いベースビー ルを醸造した後、脱アルコール工程でアルコール分をできるだけ除去する製造方法を採用することにより、100%ビール由来原料ならではの麦のうまみとコクを実現し、ビールらしい本格的な味わいに仕上げました。お客さまからは味についての高い評価に加えて、「自分だけノンアルを飲んでいると雰囲気を壊すようで気が引けていたが、これなら一緒に楽しめて嬉しい」といった声をいただき、新しい食シーンの提案につながる商品との自信を深めています。9月からは飲食店向けに小瓶を新たに発売するとともに、アルコール度数で選べるメニューの提案を強化することでお客さまの選択肢拡大を図ります。
 コロナ禍によって社会にさまざまな変化があり「10年後に予想されていた変化が前倒しで起こった」と考えています。商品のプレミアム化やニーズの多様化への対応は、いまを生き延びるために不可欠なことですが、それは同時に将来のマーケット拡大につながる。これからも外食業界と緊密に連携しながら、より豊かな食の実現に貢献するとともに、“期待を超えるおいしさ、楽しい生活文化の創造”をめざします。

大阪ガス株式会社

大阪府大阪市中央区平野町4丁目1-2
☎06-6205-4633
https://www.osakagas.co.jp/
[設立]1897年4月
[資本金]1321億6666万円

大阪ガス株式会社
理事
エナジーソリューション事業部 開発部長
吉村和彦

「涼厨®」、さらに「楽厨®」の開発強化で
外食産業への更なる貢献を進める

 弊社は創業以来、食と密接に関わりながら企業活動を進めてきています。昭和8年開業の直営「ガスビル食堂」は当時の大阪を代表するレストランでもあり、その後、液化天然ガスの冷熱を利用した「冷凍めん」の開発・販売や、和と洋の外食チェーン等の展開にもグループ自ら取り組みました。そして現在は、外食産業、食品メーカーや厨房機器メーカー等フードビジネスを支える皆さまに電気・ガスエネルギーを始めとするさまざまな商材をお届けしています。

コロナ禍の活動

 このコロナ禍は本当に外食産業にとってはダメージが大きく、何か弊社でもできないかと考え、食の創造空間をめざす「ハグミュージアム」をフルに活用して、外食産業の方々の物販商品開発、テイクアウト商材の開発の後押しをさせていただきました。ハグミュージアムのさまざまな調理機器を駆使しながら、冷凍・レトルト化や新商品開発、そして新しい食ビジネスに役立つ“人と場”を結びつける機会を提供させていただきました。さらに、「ハートフル弁当プロジェクト」の活動では食関連企業さまを始め、多様な企業とコラボレーションして、新型コロナウイルスと闘う医療従事者を応援するために大阪府内の3病院に弁当をお届けしました。また、社内でクラウドファンディングを実施して、飲食店を先払いで応援するプロジェクト「さきめし」と連携し、「Happy eat project」を展開。さらにコロナ対策の換気促進に関しては、「CO2センサー」をセットした新電気料金メニュー「動力用プランAir」も受付開始。換気状況と室内混雑状況をスマホやタブレットで遠隔から可視化できるサービスとセットになった電気を提供し、これも感染症対策の一環として高い評価をいただいています。

涼厨から楽厨へ

 弊社が開発しました「涼厨®」はまさに外食産業に大きく寄与し続けていると自負しています。この業務用厨房機器「涼厨®」は、従来機器より表面温度を下げることで輻射熱低減による厨房内労働環境の改善を実現しました。加えて、集中排気により最大約30%の年間空調負荷を削減し、省エネルギーを達成しています。現在、「涼厨®」のラインアップでは30メーカー680に型式を拡大し全国的な普及への取り組みに広がり、都市ガス会社11社で累計10万台を超えて販売が伸長しています。 さらに、この「涼厨®」に続く「楽厨®」も厨房機器メーカーさまと共同で開発しています。調理時間、作業時間の短縮と負荷軽減をキーワードにしてより作業効率向上に役立つ事をめざしているのが「楽厨®」です。具体的には、予洗いや送り出しを自動で行う「予洗付洗浄機」があり、両面タイプの「ガスグリドル」等もメーカーさまが当社との共同開発を経て、販売をすでに開始しています。共に深刻な人手不足や低い労働生産性、厳しい労働環境の改善の一助となる製品だと考えています。

カーボンニュートラルへの取り組み

 Daigasグループは再生可能エネルギーや水素を利用したメタネーション(水素とCO2を合成してメタン(CH4)を製造する技術)を軸とした都市ガス原料の脱炭素化や、再生可能エネルギー導入を軸とした電源の脱炭素化により、「2050年カーボンニュートラル実現」へ挑戦し、持続可能な社会の実現に向けたソリューションを提供していきます。また、脱炭素社会実現のためには、その技術が確立するまでにCO2排出量をいかに削減するかが鍵だと考えます。そのため、2030年度におけるCO2排出削減貢献目標(850万トン)をさらに積み増し、省エネや天然ガスの高度利用、再生可能エネルギーの普及などによる徹底したCO2排出量削減貢献を進めていきます。  そして、火で調理することが食文化に広がりをもたらし、直火調理独自のおいしさが伝統の技と味を継承し新しい料理、食文化の可能性を発展させていくことを信じています。そうした環境づくりを支援させていただくことも弊社の使命だと思っています。

北日本カコー株式会社

石川県白山市源兵島町1006番地
☎076-277-1230
http://www.ishino-group.com
[設立]1971年2月
[資本金]2000万円

北日本カコー株式会社
常務取締役営業本部長
長戸敏雄

タッチパネルと特急レーンで効率化
コロナ禍で「すし店」以外の活用が加速

 石川県に本拠を置く石野グループ・北日本カコー㈱は今年、創業50周年を迎えました。回転ずしコンベアの国内外への納入実績は7000店を超え、海外30カ国に輸出販売を行っております。回転ずしコンベアはお店にとっては営業の核となる設備ですので、準備段階から通常営業の実施、メンテナンス、新規出店時の改善業務などのサポート体制が重要です。これまで私たちは回転ずし店のパートナーとして、責任を持って対応してまいりました。
 いまではあたり前となった特急レーンやタッチパネルによる注文システムの開発は、パートナーであるお取引先の声がきっかけです。以前は、テーブルナンバーを載せた皿を回すのが通常でしたが、ご注文したお客さまのテーブルに届く前に他のお客さまにとられてしまうことも多く、そのようなトラブルを防ぐために1皿の注文に対し5皿分を握って流すというお話をお聞きしたことがあります。こうした店側・お客側両方のストレスを解消したのが特急レーンです。一方、タッチパネルの開発は、ホールと調理場をつなぐために使っていたインターホンが、医療施設の病室とナースステーションの連絡用機器の流用品だったため、飲食店内では聞き取りにくく注文ミスが出るという、利用店からのご相談がきっかけになりました。パートナーの声に耳を傾けることで生まれた特急レーンとタッチパネルという組み合わせは、大手チェーンのご採用から、回転ずし業界に一気に普及し、標準仕様となりました。
 この度のコロナショックは、外食産業に大きな影響を及ぼしましたが、回転ずし店の売上げの落ち込みは他の業種業態に比べ小さくとどまっています。元々デリバリーやテイクアウトの需要があるという商品特性もございますが、特急レーンとタッチパネルを組み合わせたシステムが、お客さまの安心感につながっているようです。ロス削減や注文ミスの防止を目的に開発したシステムですが、コロナ禍でもお役に立てたことをうれしく思います。

焼肉店での活用も進む

 昨今では他業種パートナーとの新たなお取引が始まっています。回転ずし店の効率化とサービス向上に大きな貢献を果たした特急レーンとタッチパネルですが、回転ずし以外の業種でのニーズがこれまで以上に高まっています。
 焼肉業界がそのひとつです。焼肉店のオペレーションはシンプルですが、追加注文が多いため、ホールスタッフは何度も厨房と客席間を往復しなければなりません。しかし、特急レーンとタッチパネルを組み合わせることで、大幅な効率化が図れますので、スタッフ数を削減することも可能になります。また、効率化によってスタッフにも余裕が生まれますので、お客さまにも笑顔で対応できるようになるなど、サービスの向上も期待できます。さらには人件費削減分を肉の品質アップに回すことができるなど、経営者にとっては多くのメリットがあるでしょう。
 これらのメリットを活かして業態開発をしていただければ、焼肉以外の業種にも、特急レーンとタッチパネルをご活用いただけると思います。回転ずしが言わば国民食となり、全国に普及したことによって、お客さまは抵抗なく特急レーンとタッチパネルを使ったシステムを活用できるという環境にあるからです。徹底した効率化を図り急成長を遂げた回転ずしのノウハウを、他業種でも上手にご活用いただければ、大きなビジネスチャンスにつながると確信しております。
 コンベアもさまざまな製品開発を進めています。駆動音や振動音がなく洗練されたデザインのチェーンレスコンベアはその一例です。デザイン性の高い空間のレストランで、タパスやデザートのような、盛り付けの楽しさでアピールができ、手に取りやすい商品を流していただければ、店舗演出としても効果が出るでしょう。
 当社は回転ずしシステムのご提供を通じて、経営戦略立案や店舗運営コンサルティングなどソフト面のノウハウも積み重ねて来ました。今後も、回転ずしはもちろんのこと、他業種の皆さまとも新たなパートナーシップを結び、外食産業の発展に貢献できるビジネスモデルをご提案し続けていきたいと思います。

キッコーマン株式会社

千葉県野田市野田250
☎0120-120358
https://www.kikkoman.co.jp
[設立]1917年12月
[資本金]115億9900万円

キッコーマン食品株式会社
プロダクト・マネジャー室
加工業務用プロダクト・マネジャー
川岸寿夫

リアル・デジタルの両面で情報を発信
情報面でのサポートも強化していく

 当社は1917年に、千葉・野田周辺の醤油醸造家8家が合同して設立しました。飲食店さまとのパートナーシップは、設立以来長く続いています。80年代からは、業務用調味料シリーズの販売をスタートし、飲食店向けのサポートをさらに強化しました。デルモンテのトマトケチャップや飲料、マンズワイン、マンジョウ本みりん、豆乳など、幅広い製品ラインアップによって、飲食店さまのご要望にお応えしております。
 当社が近年力を入れているのが、飲食店経営者や現場の皆さまとのパートナーシップです。新製品開発にあたっては、業務用でも家庭用でも、しっかりとしたマーケティング調査を行ったうえで販売に至るのですが、卸売会社を介したお取引が一般的なので、飲食店現場との直接のコミュニケーションが難しいという課題がありました。
 こうした課題を解決するために、2020年に本格的な業務用サイトを立ち上げ、今年はじめの改修では、レシピ検索機能を導入するとともに、AIによる関連レシピのレコメンドといった機能も追加しています。この業務用サイトのレシピは、当社独自開発や外部委託のレシピがあり、今後も順次追加していく予定です。スマートフォンでもパソコンでも検索のしやすいサイトデザインとなっていますので、ぜひ新メニュー開発にお役立てください。

飲食店の課題解決策を発信

「飲食店様向け 課題解決のご提案」といったパンフレットなどもご用意しております。「人手不足対策」「衛生管理強化」「メニュー単価アップ」「食制限対応」といったテーマで、当社の製品を利用しての店舗力アップをご提案しています。いくつか例を挙げると、省力化のための濃縮ワインシリーズ。良質なワインの風味を残すため減圧低温加熱で、1/2や1/4まで濃縮した製品です。通常の加熱で煮詰める時間と手間、長時間加熱によるワインの風味が飛ぶなどの問題がなく、手軽に濃厚なワインの風味を料理に加えることができます。当社が先行開発して家庭用でも人気の卓上密封ボトルしょうゆは風味の保持ばかりではなく、飲食店では衛生管理商品としても注目されています。詰め替えの必要がなく、ボトル表面のアルコール拭き取りも容易なので、お客さまの安心感を高める商品です。業務用ではSIAA認証の抗菌ラベルもあり、さらに注目されています。単価アップには、フリーズドライのしょうゆににんにくなどの香ばしい具材を加えてサクサクした食感とやみつきな味わいが楽しめる「サクサクしょうゆ」や、通常のトマトケチャップに比べ約1.5倍のリコピンを含む「デルモンテ リコピンリッチトマトケチャップPRO」など、メニューの付加価値を高める製品もご紹介しています。食制限対応としては、ベジタリアン対応とアレルゲン不使用の2つをコア・バリューとした「ワン・ファミリー」シリーズがあり、新たに「てりやきのたれ」も加わりました。プラントベースフードを使用したメニューにも対応できます。
 こうした情報提供は、通常時であれば、卸売会社の協力も得られたのですが、コロナ禍の現在、飲食店の皆さまと卸売会社の接触の機会も限られており、私たちメーカー自らも飲食店向けの情報を積極的に発信する必要があると感じています。情報発信のデジタル化は今後もますます進展していくことに間違いはないでしょう。当社の業務用サイトはもちろん、卸売会社と飲食店とのコミュニケーションでも、スマホで「キッコーマンから、こんな新製品が出て、動画で使い方がわかるので時間がある時に見ておいてください」といったやりとりが増えてくると、メーカー・卸売会社・飲食店のつながりが深まると思います。
 リアル店舗と当社とのパートナーシップも重要なテーマで、飲食店の皆さまのご意見をうかがう機会を今後も増やしていく予定です。外食業界にとって、しばらくは困難な時期が続くと予想されますが、外食の楽しさは再認識されています。新型コロナウイルス感染症が収束しお客さまが戻ってくる時に備え、当社としても飲食店のパートナーとしての努力を続けていきたいと思います。