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INTERVIEW

別冊食堂№3「デリ・そうざい」トップインタビューより

何でも安く売ればいい時代は終わり

塙 昭彦氏(イトーヨーカ堂常務取締役食品事業部長)
 
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何でも安く売ればいい時代は終わった。これからは味で勝負

――イトーヨーカドーグループのそうざい戦略の中核会社となるアイワイフーズさんの設立が、1964年3月とは、随分、古いんですね。

 64年には、中華そうざいを主体とする冠生園という会社があったんです。そして、昨年の3月、そこを存続会社にし、豆腐工場を主体とするデイリーフーズが対等合併してIY FOODS(アイワイフーズ株式会社)という社名にしたんです。今年の4月には、新工場を作って、これから、企業としてどういうふうにしていこうかと考えているところです。91年度の売上げが65億円ですけれども、まる3年後までには119億円くらいまでにしたいと思っています。そのためにいま現在イトーヨーカドーを含めグループ会社の171店舗(1991年の取材当時)に商品供給を行なっていますが、そこでのそうざい売場をまず強化したいと思っています。(中略)

――グループの171店舗というのはどのようなところですか。

 イトーヨーカドーのほかに、スーパーマーケットのヨークベニマルやヨークマート、それにロビンソン百貨店(現在はそごう・西武に吸収合併)などです。(中略)
 私の場合、イトーヨーカ堂の100%出資会社の社長*でありながら、イトーヨーカ堂の食品事業部長という肩書も持っているものですから、大変厳しい選択をさせられています。イトーヨーカ堂の食品部長としてはたとえ関係会社であっても甘やかしは許されません。他のお取引先と同じで、公平に対応します。
 また、アイワイフーズの社長としては、イトーヨーカ堂側から出店要請があても、充分な収益性が見込めなければ出店を許可するわけにはいきません。そして、出店することになったならば、店のレイアウトからプランニングまで、全部自分たちでいたします。通常は、店などもその場しのぎになってしまうものですが、私どもは、まず、お客さまに支持される売場作りというのを独自に考えるのです。普通の会社であれば、100%子会社だから何がなんでも親会社の意向通りにやりなさいということになるんですよ。ところが、私はそんなことを言ったことはありません。イトーヨーカ堂、アイワイフーズ両社の成長のためには、店とアイワイフーズが相談して、話し合い、このような条件なら間違いなく売上げを上げますよ、ということのお互いの確認がされなければ出店しないということが前提条件になっています。今、ほとんどの店が他の店舗を入れるよりも効率的にも高く、お互いに利益が出ています。

*塙氏は、2007年5月にセブン&アイ・フードシステムズ代表取締役社長、デニーズジャパン代表取締役社長に就任している。

これからの食品の中で、そうざいというジャンルをいちばん伸ばさなくてはならない

――従来の生鮮のラインに連動して、セルフ方式のそうざいがこれまであったわけですが、それを対面方式に変えたのはなぜですか。

 イトーヨーカ堂としては、これからの食品事業はどうなるかを考えますと、そうざいというジャンルが一番伸びるであろうし、伸ばさなくてはいけない、と思うんです。われわれは決してグルメ食品を売りたいとは思っていない。ある一定の商圏の中で大多数のお客さんが喜んでくれるものは何なのかといったら、それはそうざいなのです。しかもベーシックなもの、ごく当たり前のものを一所懸命、味の研究をして売っていくのが大前提だと思っております。でもそれは半径2kmなりのお客さまが毎日来て買ってくれるものです。もちろん土・日になると車のお客さまが増えますから、半径は10kmなり15kmに広がります。土・日は家族全員の団らんで、たまにはご馳走を食べたいわね、となる。こうしたニーズにどう応え、売場・商品をどう演出できるのか、ということが大切ですね。
 私どもが対面方式でやっている中で代表的なものは、中華そうざいと天ぷらのコーナーで、他にうなぎなどもあります。しかし、対面方式でないといけない必然性、ホットな演出をしていかなければいけない商品ということになりますと、やはり天ぷら、コロッケなどの揚げ物、それと中華そうざいなんです。これらの売上げウエートというのがそうざいの中では30%を占め、圧倒的なんです。前年対比でいうと、125~130%くらい伸びています。

――そうざいの売上げ構成比と伸び率はどのくらいですか。

 そうざいすべてでは、食品全体の売上げ構成の10%、伸び率は115%です。そして今後はGMSタイプのスーパーでそうざい売場をどういう形にするかが、これからの食品事業の課題になります。もっと細かく申し上げますと、これまでのスーパーでは、食品というのは価格が安くなければ売れないというのが、大勢を占めていて、なんでもかんでも安く売るのが主流だったわけです。
 ところがもうそれでは通用しなくなった。ですから、そうざいだけではなしに、扱っている食品の全アイテムを、お客さまがなぜ買うのか、ということをわれわれは全部マトリックス化して調査したわけです。お客さまが味で買うもの、鮮度で買うもの、価格で買うものなどを調べたわけです。たとえば、インスタントコーヒーなどは90%以上が価格で買われている。しかし、味なり、鮮度なりといいうのを第一優先にしたものが、結果的に見ると私どもスーパーの差別化商品なんです。そうすると、魚はどうしたら漁場に近づくことができるのか、果物などはどうしたら産地で味わえるような味のいい、おいしいものを持ってこられるのか、ということが重要になります。
 今、私どもではほとんどの果物で、鮮度表示というものをしています。私どもで設定した糖度基準をクリアしたものでなければ売らないという姿勢を持っています。特売にかけた商品でも味が悪ければ売りません。それほどに味にこだわっているわけです。こうした私どもの考えから見ると、そうざいは、オリジナリティの出せる商品、他店との差別化に役立ついちばんの商品だと思っているわけです。その部分で差別化ができないと、スーパーマーケットの食品の存在価値がありません。(中略)

――アイワイフーズさんの新工場稼働は、イトーヨーカドーさんのそうざいに対する熱い思いが込められていますね。

 そうざいは、今、最も力を入れて取り組みたいと思っているジャンルです。お客さまの求めている味は何なのかということについて究明していきますと、そうざいこそオリジナリティが発揮できる、また、差別化もできる部門だと思っているからです。繰り返しになりますが、価格で勝負している時代ではなくなってきたな、ということです。私が味ということにこだわり、味を追っていくのは、これからのスーパーマーケットにとって、それがいちばん大事な要素だと思っているからです。業界の中では、うちが、そうざいにもっとも力を入れているのではないか、と自負しています。(以下省略)