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INTERVIEW

別冊食堂『デリ・そうざい№4』(1992年発行)より

商品にはまず発想と思想が必要

赤尾昭彦氏(㈱セイコーマート 当時・専務取締役本部長 )
 
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 今年(1992年)6月段階で、北海道地区で400店舗、その他の地区で159店舗と、合計559店舗(2014年2月現在は1160店)を数えるようになっています。(中略)
 コンビニエンスストアも、ただ店だけがあれば売れる、といった段階ではもうないと思いますよ。商品、クレンソネス、人、物流などの、総合力が必要になってきています。

商品の品揃えはドロ臭いんです

 うちの場合、コンビニエンスストア(以下、コンビニ)といっても、商品はカッコいいものを出しているわけではないんですよ。ここらあたりは、車社会ですから、コンビニというとロードサイドに出ないといけない。当初は金もあるわけではなかったですから、うちの場合、住宅地を控えた、旧街道に出ることが多かったわけです。ですから、お客さんは昔からの住人が多かったりして、結果的に地元密着型になりました。
 商品構成を外食の業態にたとえますと、ローソンがピザハウス、セブン-イレブンがイタリア料理店とすると、うちはそば店、ラーメン店、食堂といった世界。そういったイメージの品揃えだといえます。地味なんですよね。
 売上構成比は、この6月のデータですと、「青果」が1.4%、「日配品」が25.5、缶や瓶の飲料を含めた「食品」が24.6、タバコが13.3、酒が14.3、ビール、雑貨が残り。日配品には、アイスクリームやそうざい、弁当、生菓子、パン、牛乳などが入りまして、そのうちの40%を弁当、そうざい、すしなどで占めます。いわゆるおかずだけのそうざいですと、14、15%くらいでしようか。
 先ほどもいいましたように、地味ですからね、そうざいといっても、焼きとりとか、サラダとか酒の肴的なものが多いです。そうざいの中心価格は230円くらいです。そうざいや弁当のお客さんは、リピーターが多いんですよ。そうそう、サラダではマヨネーズを使わないものが伸びていますね。生鮮も置いていまして、サラダに使うような野菜とか、くだものは比較的売れています。手をかけないでいいものですね。

食品の鮮度や質にはこだわってます

 生鮮は生肉も置いていまして、店によって売れるところと、売れないところがありますが、鮮度と品質は非常に重要視しています。なぜならば、肉、魚、野菜といった素材は、当社のそうざい商品の材料にもなるものですからね。みかんなどは、シーズン3ヵ月で140tを売るくらいです。ただ売れないところもあるので、店での管理の問題はありますが。
 うちは自社工場でそうざいをつくっていますが、同じものを某有名百貨店にも出しているくらいですからね。品質には、本当にこだわっているのです。焼きとりにしても、ただのひと切れも冷凍肉は使っていません。鶏は50万羽を飼育させていますが、生のおいしさを保ち、かつ劣化、雑菌の繁殖を抑えるために、絞めて2時間で真空パックにし、低温流通で配送。
 お米にしても、茨城から入れていますが、精米してから商品にして店に並べるまでに、100時間以内と決めています。そうでないと最近の米は乾燥度合いが違ってきていて、吸水率にバラつきが出ますからね。醤油はヒガシマルと丸金を使っています。バカみたいなんですが、醤油を決めるのに、わざわざ産地の小豆島とかにまで行ったりもしましたね。
 だしもグルタミン酸ソーダなどは入れていませんし、添加物も使っていません。自社工場はこの9月に増床し、パン工場も合めて2700坪。延べ240人で24時間稼働体制で作っています。もちろん、鮮度を大切にしています。パッケージ後、短いもので8時間で店へ配送するものもあり、どうしても24時間稼働でないといけないわけです。配送は1日2回です。
 弁当だけは専門業者に依託していますが、両社で試作、試食して一緒に開発していますし、データは直にその業者に回していまして、現場の反応を商品づくりに反映させ、現場と工場が一体化して動くような体制です。

顧客の反応をフィードバックします

 うちは固定客が多いのですが、住民を、お客さんとしてガッチリ掴むために、独自のフィードバックシステムというのを持っています。ま、簡単にいってしまえば、各店の顧客の会話情報を、商品に生かすための独自のノウハウです。このノウハウで蓄積されたデータがエネルギー源。
 顧客が、店で苦情をいいやすい雰囲気にしておくことが重要なのですね。苦情を処理することは、問題点を明らかにし、それら一つひとつに対応していくことで、顧客の信頼を勝ち得ていくわけですから。
 ですから、顧客情報を得るためには、学生アルバイトを使うのは、ちょっと問題なんですね。情報をキャッチして、それを店の経営に反映させようという意識に欠けますから。うちでは、なるべくオーナーが店に出るように指導しています。
 自分で得た情報が店の売上げにいい影響を与えるわけですから、うちのチェーンのオーナーたちは、非常に前向きですよ。ひとりのオーナーが何店も展開しているケースは多々あるのですが、その場合、店独自のノウハウを持ちはじめます。そういう店には活気がある。
 また、本部のバックアップ体制を強化し、店のパワーを省力化した分を、お客さんへのサービスにあててもらうようにしています。

コンビニは食品小売業です

 営業時間は、ほとんどが朝7時から夜11時までです。24時間営業の店舗も2店ありますが、基本的に、商売をやる側が、人間としての生活ができるかどうかが大切だと思っていますから。そもそも、夜中の3時、4時に歩き回っているというのは、通常はあまり健全なことではないですよ。そうした異常なマーケットは狙いません。人間らしい商売をすることが、あくまでも前提だと考えています。
 コンビニは何かというと、それは「食品小売業だ」と、私どもでは捉えています。そこが原点。食品を売る店だということに徹しています。ですから、1品1品、お客さんの立場に立って満足できるものを、提供したいと考えています。配送効率優先の商品開発にはしないのです。安全で、より満足してもらえるような商品を供給し続けていきたい。
 商品づくりには、売り手の発想、思想がなくてはいけない。それをお客さんにどうぶつけていくかと、いつも考えています。いまのお客さんは本当にレベルが高いですから、常にそこにフィットしたものをくり出していくには、真剣に取り組まねばならないですよ。お客さんは絶対侮れない存在です。
 それにしても、食品というのは、本当に奥が深い。知っていけば、知っていくほど深いのです。特に最近は、そのことを痛切に感じています。           

■赤尾昭彦(あかお・あきひこ)
1940年、北海道生まれ。59年、北海道留萌高校卒業後、北の誉酒造に入社。60年、丸ヨ西尾商店に移籍。74年に退社後、セイコーマート設立、取締役に就任。79年、常務取締役本部長に就任、87年、専務取締役本部長に就任。その後、代表取締役社長を経て、現在は代表取締役会長。