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企業の商品開発 おいしい料理、発想の原点
大繁盛店に共通する要点は言うまでもなく「おいしい料理」にある。それは味であり、品質であり、ボリュームであり、何より価格以上の価値を指す。本特集は商品開発に携わる10人のプロフェッショナルに発想の原点を聞いてみた。
 
 

“捨てられている食材”をどう活かすかが発想の原点です

 新鮮なモツを使用したもつ焼き大衆酒場をメインに計120店舗を展開する㈱エムファクトリー。新宿三丁目に出店した「新宿ホルモン」、「ホルモン横丁」などは連日満席の人気を博し、人通りの少なかった街の流れを変えたほど。9坪で月商1200万円を計上する「日本再生酒場」をはじめ、数々の繁盛店を世に送り出している。
 もつ焼き以外には「東京ハヤシライス倶楽部」「クリスマス亭」「Cafe Buns」など3つのブランドを展開。現在は直営12店、全国にフランチャイズ(FC)108店を構え、韓国にも洋食業態を3店舗出店し、その勢いを増している。

――これまで「白センマイ」や「レバテキ」など、数々のヒット商品を生んできた御社ですが、新商品はどのように開発していますか?

 新メニューは店が暇な時に思いつくんです。お客さまがいない営業中にふと「こうしてみるのはどうだろう?」ってアイデアが浮かぶんですよ。
 たとえばセンマイって黒色が普通ですよね。僕はこの黒色が見た目にもどうも嫌だったので、なんとか白くする方法はないかと試行錯誤しているうちに、白くすることに成功しました。この白さをタレで色付けするのはもったいないと、塩味のセンマイができたのです。
 当社はモツを主力にした“もつ焼き”がメインです。そのため、よくと畜場に足を運ぶのですが、行った際には必ずゴミ箱をチェックします。“いらない部分”をどう使うかを商品開発のヒントにしているので、捨てられている部位はどこか、またそれをどうしたら活用できるかなどを考えています。これは農家に行った時も同じですね。捨てられている野菜は何か。当社で上手く活用できないか。常にそんなことを考えています。
 また、講演などで全国を回ることが多いのですが、その際に地方の変わった調味料や特徴のある地場産製品を見て回ります。たとえば、青森県で見つけた“しょっつる”は「キムチ」に入れて味の深みを出したり、「もつ煮込み」に八丁味噌を入れて味わいに変化をつけたりと、出会った調味料や食材を、既存の商品にプラスすることでマイナーチェンジを図っています。
 新商品の開発は、基本的に僕とい志井グループの会長とで決定しています。当社ではセントラルキッチン(CK)を保有しているので、工場長が具体的な商品に落とし込みます。数ヵ月に1度は私が味を確かめて、変化がないかをチェックしていますね。

――CKではどんなものを生産していますか?

 まず主軸商品のモツですが、朝と殺された一次加工の肉がと畜場からCKに届きます。それを部位ごとに分けてから各店舗用にまとめ、CKにある冷蔵庫に一時保管しておきます。それを、各店のスタッフが毎日取りに来るという流れになっています。CKまで足を運ばせるのはスタッフに“肉を仕入れる”という感覚を身に付けさせるためです。店で待っているのではなく、自ら足を運ぶことで“仕入れる”ことを教えていますね。
 一部のFCには串打ちしたモツを用意していますが、それ以外は各店舗で解体、下処理、串打ちまでを行なっています。自分で串打ちしたものは、愛情を持ってお客さまにお勧めできますからね。
 もつ焼きのタレは基本にCKで生産します。1日全店で2リットルは消費しますよ。あとは「キムチ」や「ゆでタン」など、仕込みに手間のかかるものはCKで生産します。
 CKを保有したのは、味や品質の管理がしやすいのはもちろんですが、各店のミーティングの時間を設けたかったことも理由のひとつです。ミーティングをすることで、モチベーションが上がったり、日々の営業がスムーズになったりと、さまざまなメリットがありますからね。僕は今でも可能な限り現場に立つようにしています。具体的な人材教育をしていないからこそ、スタッフには、僕が働いている姿を見て学んで欲しいと思っています。

――各店舗の設備についてお聞かせください。また店舗での商品の管理方法はどのようにされていますか?

 焼き台は、炭焼き台を利用しています。その他は、基本的な居酒屋にある設備と同様ですが、特徴としてはフライヤーを使用しないことでしょうか。これは、フライヤーの油による汚れを抑えるためです。洋食業態も展開していますが、そこでもフライヤーは置いていません。揚げ物は、鉄鍋に油をひいて揚げるように指示していますね。
 モツの管理方法ですが、これは衛生面を考慮しドロアー式の冷蔵庫を採用しました。各引き出しに、串ものと生肉を分けて管理します。さらに串の部位は、なんこつ、レバ、ハラミ、ハツ、こめかみなどの“赤モノ”と、ガツ、大腸、小腸、直腸、チレの“白モノ”でも保管場所を変えて、品質管理を徹底しています。
 厨房の動線や設備は基本的に私が決めています。重要なのは、いかに早く提供できるかということ。スピード提供ができ、さらには少人数でも回せるレイアウトにすることを優先しています。

――フードとドリンクの売上げ構成比を教えてください。また、原価や人材に対してはどのようにお考えですか?

 平均するとフードが4割、ドリンクが6割くらい。店舗によってかなり差があります。たとえば、「い志井 調布本店」ではフードとドリンクは半々、「新宿ホルモン」ではフード3割、ドリンク7割という内訳です。基本的に“飲み屋業態”が多いので、ドリンクの売上げが高いですね。
 フードの原価率は全店平均32〜33%、人件費は20%程度です。「日本再生酒場」の人件費率は17%で全店の中でも低く、スタッフの能力が高いので1人当たり1日で7〜8万円を売り上げていますよ。
 一般的にメニュー開発で重要なのはコストバランスだと思うのですが、僕はコストばかりを重視したら、いい商品を生み出すことはできないと考えています。地方の生産者さんとお会いする機会も多いので、たとえば生産者さんの想いを伝えることも大切だと思うのです。素材へのこだわりや価値を伝えられる商品を作り、それから初めて原価を考える。当社は多店舗化こそしていますが、すべてこだわりを持った個店であり専門店です。そのために、コスト重視のメニューは展開していません。

――御社はすでに韓国にも出店されていますが、海外での展開は今後も強化していく予定でしょうか?

 2011年は韓国に洋食業態を3店舗出店しました。韓国にCKも作ったので、これからFC展開も計画しています。韓国以外では、タイやマレーシアなどへの出店も話が進んでいるので、海外での展開も積極的に行なう予定です。
 国内では、引き続き直営店の出店に力を入れていきます。2012年の予定では直営10店、FC50店の新規出店を考えています。また直営店をスタッフに譲渡する形で独立させる、“独立支援”も行なっていきたいと思いますね。

「新宿ホルモン」の売れ筋上位5品

DATE

㈱エムファクトリー
東京都調布市下石原2-47-10
TEL:042-499-3448
設立:1999年12月22日
店舗数:120店舗(直営12店舗、FC108店舗)
年商:30億円
従業員数:60人(直営のみ)
http://www.ishii-world.jp/

 
 
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