Follow us!

Facebook Twitter
TOP > 特集・連載一覧 > あの店、企業の表品開発

企業の商品開発 おいしい料理、発想の原点
大繁盛店に共通する要点は言うまでもなく「おいしい料理」にある。それは味であり、品質であり、ボリュームであり、何より価格以上の価値を指す。本特集は商品開発に携わる10人のプロフェッショナルに発想の原点を聞いてみた。
 
 

アイテムを絞り品質を常にブラッシュアップし続ける

 東京・高田馬場に「魚・旬菜とお酒 心」を2000年に出店後、焼き鳥や水炊きなどの鶏料理を核商品に据えた「てけてけ」、とんかつ店「坂井精肉店」などのブランドで、計28店舗を経営するユナイテッド&コレクティブ㈱。2011年は11〜12月の間に「てけてけ」4店舗を出店するなど、近年出店の勢いを増している。これまで直営店のみで展開してきたが、2012年はフランチャイズ(FC)展開本格化に向けた事業展開を行なう方針だ。

――御社のメニュー開発で一番気を遣っていることは何ですか?

 当社は和食業態を中心に展開しています。メニューはすべて奇をてらったものではなく、厳選した素材で勝負することを第一に考えています。
 たとえば「博多水炊き」などがありますが、この水炊きは以前は各店舗でスープから仕込みを行なっていました。しかし、どうしても味にブレが生じてしまう。これを改善すべく業者とPB商品を共同開発したわけです。これまでも多くの業者から「スープをうちで作らせてほしい」とサンプルを持ってきて頂きましたが、当社のコンセプトには合わなかったのです。そこで青森県の業者さんと共同開発することになったのですが、素材だけでスープを作るので当社のコンセプトに合致。PB製品にすることによって、おいしく、しかも全店で均一化された品質と味を実現できるようになりました。
 もちろん全メニューについても、常に細かなブラッシュアップを図っています。たとえば焼き鳥でいえば鶏肉の鮮度が重要です。けれども注文数の偏りによってチルドだけではまかなえず、以前は冷凍肉を使用せざるを得なかったんです。そこでアイテム数を絞ることで商品の回転率を上げ、品質の向上を図りました。アイテム数を限定することで冷凍肉を使用することなく、鮮度の良いチルドの鶏肉を使用した焼き鳥を提供できるようになりました。
 また常に商品精度を上げることで、業態の精度も高まりますし、今では“細かなブラッシュアップ”は当社のDNAになりつつあります。

――メニュー決定は坂井社長が行なっているのでしょうか?

 私がメニューコンセプトをディレクションし、具体的に商品に落とし込むのは商品開発部の佐藤雅幸氏が担当します。たとえばテイクアウト用に開発した唐揚げについて言うと、私は「冷めても美味しくて、奇をてらわない表面がサクッとした商品を作ってほしい」と伝え、オーソドックスな味付けの醤油味と塩味の唐揚げを彼が開発したわけです。唐揚げはいわゆる大衆食ですから、定番の味が一番良いだろうとの判断で、現在の唐揚げができあがったのです。

――フードの原価率については、どのようにお考えですか?

 現在の原価率は全店平均でおおよそ31%。お客さまの満足度を上げるために、お得だと感じてもらえる値付けをしています。核となる商品はどうしても原価率が高くなってしまいますが、トータルで原価率を抑えている形です。たとえば鶏肉60gを使用した「ねぎま ど根性串」は原価率80%を超えており、これは1日700串を売る「てけてけ」の目玉商品として人気を呼んでいます。
「てけてけ」ブランドでは2009年にメニュー改訂を行ないました。ここで、先ほどの品質向上のために商品を絞ったという話につながるのですが、それと同時に価格も下げたんです。これまで130〜140円だった串メニューを全品99円に。これは客数増を狙った戦略でしたが、狙い通り改定前よりも客数はアップしました。さらに商品が多く出ることで、当初35%だった原価率が31%を下回ったことは大きかったですね。
 思い切って価格を下げることで企業の足腰を鍛えられますし、業態としてもエッジが立つようになりました。
 一方、「坂井精肉店」については「安い!」と思ってもらえるよう平均客単価は770円というラインで推移しています。豚肉は国産ではありませんが、海外産のチルド肉を使用しています。「ロースかつ定食」は490円とかなりお得な値付けをしており、これは1日900食出る人気メニューになっています。

――現在は「坂井精肉店」や「てけてけ」での持ち帰りコーナー併設など、中食ニーズも獲得していますが、オペレーションはどのようにされているのでしょうか?

「てけてけ三軒茶屋店」はテイクアウトの売上げ比率が30%を叩き出しており、「これは中食でもいける!」と考え展開に力を入れているのがテイクアウトコーナー「肉屋てけてけ」を併設した店舗です。ランチ、ディナーにプラスアルファの相乗効果を狙う戦略として、テイクアウト事業に参入したわけです。これまで「心」や「てけてけ」は、サラリーマンをメインターゲットに据えていたので、オフィス街が主力立地だったのですが、中食業態にすることで、オフィス街やショッピングセンターなど、出店立地の幅が広がりました。
「てけてけ」で持ち帰りコーナーを併設したのが一昨年の2010年。初めは、肉切りから調味料の調合、衣を付けて揚げるまでの一連の流れをすべて店内で行なっていました。しかし、仕込みに手間がかかりすぎるので、その分の人件費を考えるとPB製品にした方がいいと判断し、現在では肉のカットや衣の調合などはアウトソーシングしています。したがって店内では肉に衣をつけて揚げるだけのオペレーションになっています。
 一方、商品の管理については、メニューレシピとともに保管方法を記入して、各店舗に指示しています。しかしながら、それでも本部指示の保管方法を徹底してできていない店舗もあります。そこで、定期的に佐藤氏が店舗を回り、冷蔵庫を空けてチェックしています。また、スーパーバイザーの人間を配置し各店舗を統括させることで、適切な管理を徹底させています。

――今後の展開についてはどのようにお考えでしょうか?

 2012年は「てけてけ」のFC本格化の年と捉えています。「てけてけ」の創業から7年目に入り、業態もコンセプトもブラッシュアップを重ね完成度が高まってきたので、ここからスピード展開していく方針です。FCは、低投資で10年は続く店であるようなビジネスモデルを考えています。そのため、居抜き物件を積極的に活用し、24ヵ月の投資回収を実現できるモデルにしています。6月にはFC1号店を出店する予定です。
 当社では、2015年までにFCを含む200店舗経営を中期目標に掲げています。もちろんその間も当社のDNAである商品の細かなブラッシュアップを図っていきながら、展開を行なう予定です。
 商品としては、以前に値下げをした分、逆に高額商品の導入も検討していますね。最近では“価値”で商品を選ぶ消費者が急増しているので、そういったお客さまに訴求する“一歩踏み込んだ”商品を開発していきたいです。

「鶏・旬菜・お酒 てけてけ」「とんかつ坂井精肉店」の売れ筋上位5品

DATE

ユナイテッド&コレクティブ㈱
東京都港区赤坂2-17-22 赤坂ツインタワー東館13階
TEL:03-6277-8088
設立:2000年7月27日
資本金:5000万円
店舗数:28店舗
年商:20億5092万円
従業員数:500人(P/A含む)
http://www.united-collective.co.jp/

 
 
特集一覧に戻る