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企業の商品開発 おいしい料理、発想の原点
大繁盛店に共通する要点は言うまでもなく「おいしい料理」にある。それは味であり、品質であり、ボリュームであり、何より価格以上の価値を指す。本特集は商品開発に携わる10人のプロフェッショナルに発想の原点を聞いてみた。
 
 

フランスや市場でヒントを得て町場のビストロを表現する

 東京は裏銀座と呼ばれる東銀座、宝町、新富町エリア。その裏通りで、“ワイン好きが集うワイン酒場”を経営する㈲リヨンブルーアンテルナショナル。カジュアルワイン業態を牽引してきた「ポン・デュ・ガール」(2005年オープン)をはじめ、ビオワインに特化したビストロ「ガール・ド・リヨン」、カレーをメインに据えた“カレー酒場”の「カレーとワインのポール」、イタリア料理を主力とするワイン酒場「テルミニ」、そして「ポン・デュ・ガール2ドゥズィエム」と同社は計5店舗を展開している。2011年は「外食アワード」の外食事業者部門で受賞するなど、業界の注目度も高い企業のひとつだ。

――御社はカジュアルワイン業態を展開していますが、料理に関してはどのようなコンセプトを掲げていますか?

安生氏:「ガール・ド・リヨン」はビオワインに特化した、パリの下町にあるカジュアルなビストロを再現しており、全店を共通して、“3000円前後のがぶ飲みワインで、お腹いっぱい飲んで食べられる店”をコンセプトとしています。客単価は全店平均で4000〜5000円程度。そのため料理はコストパフォーマンスが高いと思っていただけるような、価格設定やボリュームに設定。「思ったより美味しかった」「思ったより安かった」と、ほんの少しでも感じて頂ける料理とワインを用意しています。
 全メニューは基本的に私が自分で食べて美味しいものを商品化しています。メニュー開発に関しては、各店の料理人に任せているので、店のコンセプトから外れていなければ、何でもトライしてみて欲しいと私は伝えていますね。
 現在「ガール・ド・リヨン」は“フランスマニア向けの店”にしようと、コンセプトを変えている最中です。一般受けを狙うのではなく、フランスに行ったことのある人なら分かる、フランスらしい店にしたいな、と。その意味で、この店だけは売上げを追わず、店内の映像演出や香りなど、五感でフランスを感じられる店にしていこうと考えています。
長谷川氏:料理は、定番を十数種類と黒板メニューを12〜15種類用意しています。黒板メニューは2ヵ月に一度「○△フェア」と題してメニュー内容を変えます。たとえば過去には「フランス地方フェア」や「春フェア」などを開催し、それに沿ったメニューを提案しました。黒板メニューは、よりお客さまが満足して頂けるような内容にするため日々改善していますね。
 毎日築地に仕入れに行くので、季節感を取り入れた料理であることも意識しています。新しいメニューは、市場で見た食材からヒントを得たり、フランスに旅行に行った時に着想したりと、スタッフ皆で話し合って決めています。またコストパフォーマンスが高いと思っていただけるようボリューム感を残しつつ、素朴な感じの“古典的なフランス料理”を取り入れるようにしています。
 ただ「ガール・ド・リヨン」は“町場のビストロ”なので、たとえば野菜をフランス産にこだわるなど、産地からすべてフランスにすることはしていません。求められているのは、“よりカジュアルに飲食を楽しむこと“ですからね。

――先ほどコストパフォーマンスを重視するというお話でしたが、商品の原価率はどの程度でしょうか?

安生氏:原価率は平均で30〜40%に落ち着くように設定しています。「ガール・ド・リヨン」の看板商品である「自家製ソーセージとフリット」は原価率が50%近いですね。これは、フレンチフライの上にソーセージと目玉焼きを乗せる、かなりボリューミーな一品です。テーブルにサーブするまでの間、それを目にした他のお客さまが「あれは何だろう? 食べてみたい!」と、誘発されて注文するということも多いんです。そのくらい見た目のインパクトがある料理ですね。また赤ワインと八丁味噌で煮込み、黒糖で味に深みを出した「一押し!! もつ煮込み」も原価率が50%を越しますね。これは全店で提供している定番商品。この2つの料理は1日15組ほど来店されるお客さまの、約半分の組客が注文します。
 私は、メニュー全体を均して原価率が30〜40%になるようなら、お客さまの満足度が上がれば単品の原価率が多少高くてもいいと考えています。

――近年ではカジュアルワイン業態が都内で急増していますが、メニューでどう差別化を図っていますか?

安生氏:私が1号店の「ポン・デュ・ガール」を出店した時は、周辺に飲食店はおろか人通りすら少なかったのですが、最近ではかなり競合が増えてきました。
 差別化のポイントとして挙げられるのは、肉料理に使用する素材ですね。今は、茨城県の「梅山豚(メイシャントン)」や「美桜鶏(ミオウドリ)」、宮崎県の「尾崎牛」などのブランドを扱っています。今後は「とねどり」も使用したいなと考えているところです。
 店で実際に使用する前は、スタッフ全員で農場まで足を運びます。生産地に行くことで勉強になったり、生産者の想いを感じたりすることができるので、素材に対しての思い入れが強くなります。さらに肉という素材は、魚よりも保存がききますし、管理しやすいので当社のような小さな店では扱いやすいと思います。
 ワインで言うと「ガール・ド・リヨン」はビオワインに特化しているので、それだけでも特徴を出せているのではないでしょうか。また、200種類ほどある豊富なラインアップも特徴のひとつだと自負しています。

――全店が10坪程度の小規模店舗ですが、オペレーションやストックなどはどのようにされていますか?

長谷川氏:「ガール・ド・リヨン」の店舗規模は11.5坪。平日2人、週末3人の体制で回しています。キッチン1人・ホール1〜2人ですね。キッチンは小さいので、1人で使いやすい動線になっていると思います。
 営業中すぐに使用する食材は、キッチン内にある冷蔵庫と冷凍庫に入れています。その他、キッチン脇の通路にはストック用の冷蔵庫を置いて管理しています。店が小さいので食材の回転も早いんです。なので、とくに在庫を抱えることもありませんね。それに、先ほども言いましたが、毎日仕入れに行くので必要以上の在庫を抱え込まないよう調整もききます。
安生氏:私は、スタッフには独立を考えた時に、この程度の規模を2人で回せるくらいのスキルを身に付けてもらいたいと思っています。スタッフが忙しく動き回ることが、店の雰囲気をつくることにもつながりますしね。
 スタッフが忙しい時には、常連のお客さまが皿を下げてくれたりと、気を遣ってくれることもあるんですよ。こうしたスタッフとお客さまが一体となることが、その店の空気感を生んでいるのだと思います。

――今後の展開について教えてください。

安生氏:私は、独立したいと考えているスタッフにはぜひ独り立ちして欲しいと思っています。ただ、いちから店をつくり、お客さまをつけ、軌道に乗せるまでが大変なので、今の時代リスクが高い。そのため初めは当社で立ち上げた店を任せて、お客さまがついたら譲渡する形で独立支援を行なっています。グループとしても大きくなっていきますし、何よりスタッフには低リスクで店を経営してもらいたいと思いますね。
 また、今いるスタッフも育ってきているので、次の展開も考えなければと思っています。やはり出店場所はこの界隈。ドミナント出店を狙ったわけではなく、店舗同士が近いことでお客さまの往来を可能にしたいという想いで、出店場所は裏銀座あたりと決めています。

「ガールドリヨン」の売れ筋上位5品

DATE

㈲リヨンブルーアンテルナショナル
設立:2006年5日
資本金:300万円
店舗数:5店舗
年商:2億2000万円
従業員数:17人

 
 
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